Human leukocyte antigen(HLA)分子に、どのような抗原ペプチドが結合し、T細胞を活性化するかを知ることは、感染免疫、がん免疫、自己免疫疾患等を理解する上で重要である。近年、HLA分子にどのようなペプチドが結合するかは、予測可能になってきたが、実際、そのペプチドがT細胞の抗原となりうるかは、抗原特異的T細胞を実際に作製し、その反応を解析する必要があった。抗原特異的T細胞の作製には、抗原特異的T細胞株を作製する必要があり、多大な時間と労力を要した。我々は、プライマリーのT細胞から抗原特異的T細胞を検出し、そのT細胞受容体(TCR)遺伝子を迅速・確実にクローニングし、その機能を解析する手法を開発してきた。平成26年度は、ペプチド抗原が不明ながん細胞に対する反応を指標に、がん特異的T細胞及びTCRを取得することを試みた。すなわち、マウスにがん細胞を移植した、担がんモデルマウスを作製し、がん浸潤リンパ球中のがん特異的T細胞及びTCRが取得できるかを試みた。T細胞の活性化マーカーであるCD137の発現を指標に、がん浸潤リンパ球中の活性化T細胞を回収し、そのTCRレパートリーを解析した。その結果、CD137陽性T細胞群では、同一のTCRを発現しているT細胞が多数検出され、抗原特異的に、クローナルな増殖をしているT細胞が存在することが示唆された。取得したTCRのがん細胞に対する特異性を解析した結果、それらのTCRの中よりがん特異的TCRを取得することができた。以上、我々の手法を応用することで、様々な抗原に特異的なTCRを迅速に・確実に取得することが可能になると考えられ、様々な疾患におけるHLAと抗原ペプチドの相互作用の解析に大きく寄与すると期待される。
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