研究領域 | 先端技術を駆使したHLA多型・進化・疾病に関する統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25133704
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80333532)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 免疫学 / 脂質 / リポペプチド / MHC / T細胞 |
研究概要 |
ミリスチン酸付加Nefペプチド特異的T細胞株(SN45)に対し、抗原提示できるドナー個体(活性化個体)と抗原提示できないドナー個体(非活性化個体)を選別し、それぞれについてMHCクラス1領域遺伝子のタイピングを実施した。その結果、8頭の活性化個体のうち6頭がA1*002:01ハプロタイプを有するのに対し、解析した14頭すべての非活性化個体のおいてA1*002:01ハプロタイプを認めなかった。統計学的検証の結果、活性化個体は有意にA1*002:01ハプロタイプを有すると結論された。他方、アカゲザル単球を認識するモノクローナル抗体を多数樹立し、そのなかからSN45に対するリポペプチド抗原提示を阻害する8抗体を単離し解析した結果、そのうち4抗体はインテグリン分子を、また2抗体はMHCクラス1様分子を認識することがわかった(残り2抗体の認識抗原は不明)。MHCクラス1様分子を認識すると考えられる2抗体についてその認識抗原の同定を進めた結果、ひとつは古典的あるいは非古典的MHCクラス1重鎖を認識し、もうひとつはアカゲザルベータ2ミクログロブリンを特異的に認識することが判明した。以上の遺伝学的また免疫生化学的解析から、SN45に対しリポペプチド抗原を提示する分子はMHCクラス1遺伝子領域によりコードされる産物であると結論づけた。またT細胞抗原受容体を欠損したT細胞株(J.RT3)に、SN45より単離したT細胞抗原受容体遺伝子を再構築すると、わずかな抗原特異的応答を観察した。さらにこのトランスフェクタントにCD8分子を再構築すると、強い抗原特異的応答を認めた。この結果からMHCクラス1様分子:リポペプチド抗原複合体の認識には、T細胞抗原受容体とCD8分子が関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝学的解析と免疫生化学的解析を併用して、リポペプチド抗原提示分子をコードする遺伝子候補を数候補まで絞り込んだ。しかしアカゲザルクラス1分子の複雑性から一部の遺伝子の単離が難航していて、律速段階となっている。
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今後の研究の推進方策 |
単離が難航している遺伝子については、通常のアプローチでは困難と判断すれば、人工遺伝子を用いることで対応する。すべての候補遺伝子が揃った段階でT細胞アッセイを組み、抗原提示分子を同定する。分子同定が完了すれば、X線結晶構造解析、テトラマー作製ならびにトランスジェニックマウスの樹立へと研究を展開する。
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