研究概要 |
HLAクラスI分子は、病原体由来のペプチドを抗原として提示して、病原体に特異的な細胞傷害性T細胞 (CTL)による免疫応答を制御している。しかしながら、病原体に特異的なすべてのCTLが必ずしも同レベルの免疫機能を有しているわけではない。HLA・ペプチド複合体は、CTLの機能的な制御にも積極的に関わっているのではないかと考え、研究を進めた。本年度は、HIV感染者の検体から、いくつかのHIV由来抗原ペプチドに特異的なCTLクローンを樹立して、抗原特異性と変異抗原に対する交差反応性を解析した。また、各CTLクローンおよびバルクCTL株から、抗原特異性を担うT細胞レセプター(TCR)をコードする遺伝子をクローニングした。この遺伝子をもとにレトロウイルスベクターを構築して、TCRを欠損した細胞に導入後、TCRの再構成を行った。そして、抗原変異と抗原認識にかかわるT細胞応答の関連性を解析したところ、重複したアミノ酸配列を有する3つの異なる抗原ペプチド(RPQVPLRPMTY, RPQVPLRPM, VPLRPMTY)に対して特異的なCTLでは、互いに交差反応するCTLと、アミノ酸の長さを明確に区別する2グループに分けられた。また、抗原ペプチドの各アミノ酸を他の19個のアミノ酸に置換したペプチドライブラリーで交差反応性を解析したところ、長さの異なる抗原に対する特異性の微妙な違いが、変異抗原に対する交差反応性のパターンに大きく影響することを明らかとした。
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