公募研究
宿主HLAアリルとHIV-1感染症の免疫制御は強く相関する。HLA分子の抗原ペプチド結合領域の多型性が、提示する抗原やそれを認識するCTLの抗ウイルス機能を通じて、免疫制御に影響すると考えられている。一方、HLA-B拘束性CTLがHLA-A拘束性CTLよりも免疫制御に強く関与するなど、HLAアリル多型性では説明できない現象が知られている。我々は、NefのHLA発現抑制に着目し、もしNefがHLA分子種によって異なった活性を示すならば、この現象の一端を説明できるのではと考えた。この仮説を検証するため、HIV-1慢性感染者(46名)に由来するnef遺伝子をクローニングして、さまざまなHLA分子(HLA-A*24, HLA-B*35, HLA-Cw4)に対する発現抑制を解析した。感染者由来のNefは、HLA-B*35よりもHLA-A*24の発現を強く抑制し(p<0.001)、HLA-AとHLA-Bに対する発現抑制の活性比の中央値はおおよそ1.25であった。一方、HLA-Cw4の発現抑制は認められなかった。HLA-A*02とHLA-B*51を発現する別の細胞を用いたところ、HLA-A/HLA-B比は1.23とほぼ同等であった。Nef配列と機能の関連を統計学的に解析したところ、Nefの202番目のアミノ酸多型がHLA-A/HLA-B抑制比と強く相関していた(p<0.01)。SF2-Nefに変異を導入したところ、Tyr-202からGluへの変異では、HLA-A/HLA-B比は4に達した。HLA-AとHLA-Bの細胞質領域には共通した配列の違いがあり、報告されている立体構造では、Nef-202はその極めて近傍に位置していた。総合すると、NefはHLA-BよりもHLA-Aの発現をおおよそ20%程度強く抑制し、このHLA選択性にはNefの202番目のアミノ酸多型が関わることを明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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