研究領域 | システム的統合理解に基づくがんの先端的診断、治療、予防法の開発 |
研究課題/領域番号 |
25134712
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
片桐 豊雅 徳島大学, 疾患プロテオゲノム研究センター, 教授 (60291895)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乳癌 / エストロゲン / システムバイオロジー / ホルモン療法耐性 / ゲノム創薬 |
研究概要 |
本研究計画では、ERAP1-PHB2結合阻害ペプチドを用いてタモキシフェン(TAM)耐性乳癌細胞における網羅的遺伝子発現情報解析およびプロテオーム解析を行い、そのデータに基づいたシステムバイオロジーによる新たなTAM耐性関連シグナルの同定および新規TMA耐性乳癌に対する治療法の開発を目指した。 今年度は、タモキシフェン(TAM)長期投与により耐性を獲得した乳癌細胞株(MCF7-TAM)を用いて、ERAP1-PHB2結合阻害ペプチド投与によるin vitroおよびin vivo抗腫瘍効果を検証し、さらにTAM耐性への関与が報告されている非ゲノム的ER活性化経路への影響を調べた。その結果、ERAP1-PHB2結合阻害ペプチド投与により、TAM耐性乳癌細胞増殖が顕著にin vitroおよびin vivoにおいて抑制され、それはエストロゲンおよびタモキシフェン処理により活性化されている非ゲノム的活性化経路(AKT,MAPKリン酸化)が完全に抑制されていることによるものであることが判明した。現在、既報のTAM耐性関連分子以外のシグナル経路(分子)同定のために、DNAマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現変動およびプロテオーム解析によるタンパク質発現変動の同定を行い、経時的な発現変動を認める分子群およびシグナル経路の抽出を試みている。その後は、この網羅的遺伝子発現解析およびプロテオーム解析データを用いた数理モデリングによるシステムバイオロジーに着手し、これに基づいた新たなTAM耐性乳癌シグナル経路モデルの構築を試み、ERAP1-PHB2結合阻害ペプチドの新たな治療法として評価を進める予定である。さらに今年度収集した乳癌臨床検体も既存の検体と併せて臨床病理学的所見、特にTAMの治療効果との相関解析を行い、新たな診断マーカーの開発にも着手する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、我々が開発したERAP1-PHB2結合阻害ペプチド投与により顕著にTAM耐性乳癌細胞増殖をin vitroおよびin vivoにおいて抑制ていたこと、また、エストロゲンおよびタモキシフェン処理により活性化していた非ゲノム的活性化経路(AKT,MAPKリン酸化)についても完全に抑制されていたことを証明した。現在、既報のTAM耐性関連分子以外のシグナル経路(分子)を同定するために、DNAマイクロアレイおよびプロテオーム解析を行い、それらによる経時的な発現変動を認める分子群および経路の抽出が終了していることから、概ね当初の計画通り進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、網羅的遺伝子発現解析およびプロテオーム解析によって発現変動の認められた分子に関して、ERAP1-PHB2結合阻害やRNA干渉法による発現変動、質的変動の検証を進め、新たなTAM耐性に関わるシグナル機構のモデルを提唱することおよび、他のホルモン療法の効果およびその耐性機構への関与に関しても検討していく予定である。さらに今年度収集した乳癌臨床検体も既存の検体と併せて用いて、新たにTAM耐性に関与していることが判明した遺伝子(タンパク)の発現と臨床病理学的所見、特に内分泌治療効果との相関解析を行い、新たな診断マーカーの開発にも着手する計画である。
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