公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
遺伝子の配列ではなく、その遺伝子ゲノムの周囲のタンパク質の酵素修飾の変化であるエピジェネティックな変化をゲノム上の特定の部位で塩基配列特異的にコントロールする技術をピロールイミダゾールポリアミド(PIP)とヒストン修飾酵素の阻害剤(SAHA)の複合体(PIP-SAHA)を合成することで実現し、特定のゲノム領域に誘導することに成功している。(特許第4873510)この技術により、実際にがんの原因となるエピジェネティックな変化、個々人のがんを特徴づける変化を強制的にがん細胞に導入し、その因果関係や機能を類推することが出来ると考えられる。まずヒト正常皮膚由来線維芽細胞の性質を変化させることが出来る化合物を含むランダムライブラリー(32種類の化合物)を作成し、それぞれの化合物投与後の遺伝子の発現パターンを解析した。さらに使用したヒト正常皮膚由来線維芽細胞の全ゲノム配列を決定するため75ゲノム分の全ゲノムシークエンスを行った。このゲノム解析結果を現在算出中である。それそれの化合物はゲノムの特定の配列を認識すると考えられるため、このゲノム認識部位と発現パターンから化合物によるエピジェネティクな遺伝子発現制御パターンについて関連解析を行うことを次年度に企画している。これらの遺伝子制御、ネットワーク解析を当該研究分野の研究者と連携して試み、さらに、化合物の腫瘍に対する効果を類推し、新たながん治療標的、がん治療薬としての開発への糸口を探る。
3: やや遅れている
化合物のライブラリーを作成し、がん細胞株への投与を試みたが明らかな細胞増殖の変化や細胞形質の変化は得られなかった。このため正常細胞で同様の実験を行う事を先に行う事とした。正常細胞での32種類の化合物の投与後の遺伝子発現の解析データを取得し、使用した細胞の全ゲノム解析を行った。このプロセスに時間を要している。最終的に目標とするがん細胞での評価にまで行き着けるかは問題があるが、少なくとも新たなヒストンアセチル化のゲノム領域特異的な誘導と発現パターンの解析が正常細胞であるが行える見込みと考えている。
がん細胞ではゲノム配列に多くの変異が起こっているため、正常細胞でエピゲノムを変更し、遺伝子発現パターンを変更することをまず試みた。この結果とゲノム配列情報を基に32種類の化合物がそれぞれ異なる遺伝子配列を特異的に認識することで、異なる遺伝子発現のパターンを生み出していることから、ゲノムのアセチル化をどのように変更すれば特定の遺伝子発現を制御できるかを検討する。この正常細胞での結果を基に、がん細胞への同様のアプローチが成り立つかを検討するという段階を踏んだ研究方針に変更し最終的にがん細胞のエピジェネティクスの変更を試み、抗がん作用を有する化合物を開発可能かを検討する。
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