公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
今年度はアルツハイマー病、軽度認知障害の患者における画像の質感認知と、局所脳損傷による多感覚性質感認知について検討を進めた。アルツハイマー病およびその前駆状態が含まれる軽度認知障害の患者を対象に、質感認知判断を必要とする野菜鮮度判断課題と対照課題として野菜輝度判断課題を施行した。また、質感認知に関連する要因を検討するため、低コントラスト視力、一般的認知機能、前頭葉機能についても検査を行った。その結果、アルツハイマー病群では正常コントロール群に比べ、野菜鮮度判断課題の成績が有意に低下していた。また、患者群の野菜鮮度判断課題の成績は一般的認知機能および前頭葉機能の指標と正の相関がみられ、認知症の進行と関連することが示唆された。一方、輝度判断課題や低コントラスト視力との関連はみられず、鮮度判断課題の成績低下は高次視知覚障害によるものではないと考えられた。したがって、アルツハイマー病では病期の進行に伴って質感認知に関わる機能の低下がみられ、傷んだ食物を食べてしまうなどの行動異常につながっている可能性がある。局所脳損傷患者による検討では、左後頭葉損傷患者において視覚性・触覚性認知とその統合機能を検討した。その結果、実物における視覚性・触覚性質感認知とその統合は保たれていたものの、それを素材に結びつける連合の過程で障害が認められた。また、画像における視覚性質感認知は障害されていることが分かった。このように、質感認知は処理の各段階で障害されうるため、各段階に対応する神経基盤を詳細に検討していく必要があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
幅広く対象患者を集める体制はすでに確立されている。視覚性質感認知に影響する眼球運動を測定する装置も設置済みで、次年度さらに研究を進める準備が整っている。
アルツハイマー病患者については、脳血流低下部位との関連を検討していくとともに、質感認知に影響する他の要因について更に探っていく。局所脳損傷患者については、関連施設を含め対象患者を募り、視覚性質感認知における眼球運動の測定や触覚性質感認知について検討を進める。以上を総合して、複数の感覚様式による質感がいかに統合されるか、質感認知からどのように素材認知に至るかなど、質感認知の各過程とその神経基盤について明らかにしていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (2件)
Parkinsonism Relat Disord
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