研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25135708
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
眞部 寛之 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80511386)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 嗅皮質 / 嗅結節 / 情動 / 質感 / 神経科学 / 電気生理 |
研究概要 |
本研究は嗅覚入力がどのように情動行動に変換されるのかのメカニズムを明らかにすることで、質感の神経回路メカニズムに迫るものである。本研究は、嗅皮質の一部であり腹側線条体に属する嗅結節が、嗅覚入力を適切な情動行動へと結びつけるためのスイッチボードの役割をしているという仮説を検証することを具体的な目的として研究を進めてきた。 本年度は、情動行動の指標を摂食行動もしくは摂食拒否行動とし、匂いによって惹起されるこれらの情動行動中、嗅結節の亜領域から持続的にニューロン群の応答を記録し、異なる嗅結節亜領域で異なる情動行動をコードしているかどうかを確かめる系を確立した。まず、マウスに特定の匂いAと報酬(砂糖)、特定の匂いBと嫌悪(もしくは無報酬)を学習させた。その後、どちらかの匂いを付けた皿に砂糖を置き、チップで覆い砂糖を隠したものをランダムにマウスに提示した。付いている匂いがAならばチップを掘って砂糖を得る摂食行動を、匂いBならばチップを掘らずに立ち去る摂食拒否行動を取らせるように訓練した。このマウスの嗅結節に複数のテトロード微小電極を埋め込み、テトロードを動かすマイクロドライブを頭蓋骨に固定する手術を施した。訓練後のマウスでは一日に数十回のトライアルをこなし、この間持続的に嗅結節ニューロンの活動を安定的に記録できるようになった。 記録したニューロン群の解析により、嗅結節の特定の亜領域で摂食行動中にのみ特異的に応答するニューロン群が存在することが分かった。これらのニューロンは摂食拒否行動時にはほとんど発火しないこともわかった。このことは、特定の嗅結節亜領域が匂いによって惹起される特定の情動行動表出と結びついていることを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、マウスに匂いを手掛かりとした摂食行動と摂食拒否行動を取らせる系を確立し、マウス嗅結節から持続的に多数のニューロン発火活動を安定的に記録できる系を確立した。また、特定の嗅結節亜領域において、摂食行動中に特異的に応答するニューロン群が得られたことは、本研究仮説の検証においては大変重要な結果であると考えられる。よって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に確立した系を用いて、以下の4点をさらに明らかにしていく。(1)摂食行動中に応答するニューロン群は特定の嗅結節亜領域にのみ存在するか。(2)摂食拒否行動に伴って応答する嗅結節ニューロン群が特定の嗅結節亜領域に存在するか。(3)同じ匂いを用いて、摂食行動から摂食拒否行動へ変化させる再学習を行わせたとき、行動の変化に伴って応答する嗅結節亜領域が変化するか。(4)嗅結節で情動行動中に応答するニューロンの細胞種の同定。
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