公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒトは物体の色を容易に判断できるが、物体画像に含まれる陰影や光沢などの成分をどのようにして除去し認識しているのか、その神経メカニズムは不明である。色情報は大脳皮質の腹側経路をたどり、最終的に下側頭皮質に到達する。色認知に重要なこの領域であれば、物体の色を抽出した結果がニューロン活動に反映されているかもしれない。この仮説を確かめるために、色と陰影と光沢を独立に操作した刺激を用意し神経応答を比較する実験を行う。本年度内では固視中のサルから下側頭皮質のニューロン活動を記録し、色選択的応答を得た。まず探索段階として一様画像刺激で実験を進めた。刺激は自作の高輝度・高コントラスト型ディスプレイを用いて1~500cd/m2の広い輝度範囲から表示した。これは灰色背景10cd/m2の観察条件で、暗い色刺激から明るく輝いて見えるまでの条件を含む。記録結果から、明瞭な色選択性を示す細胞は、輝度が大きく変化しても安定した色相選択性を示していた。次の段階として陰影や光沢を含めた画像刺激を用いるが、その画像の輝度範囲を設定する必要がある。ここまでの実験で得られた結果から色と輝度の選択性は1~100cd/m2の範囲で十分に検証が可能であると判断し、陰影画像刺激を作成した。これに白色光沢を加算する。光沢は表示可能な最大輝度1000cd/m2までを利用して効果的な光沢感を引き出す。また、画像の色と輝度を独立に操作することで生じる新たな錯視現象を発見した。画像中央の白色領域が周囲の白黒グラデーションで囲まれると、中央の白色領域が輝いて明るく見える現象がある。これはグレア錯視という既知の現象であるが、ここで誘導刺激のグラデーションに適切に色付けを行うと明るさ感向上が2倍以上に増幅されることがわかった。色相と彩度の依存性からこの現象は既知の色と明るさ効果では説明がつかず、新しい現象であると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
神経生理実験は予定通り進んでいる。計画されていた画像刺激(光沢画像、陰影画像)を用いての色名呼称実験は現在のところ進んでおらず、計画の遅れが懸念される。遅れの理由は、画像操作の過程で興味深い錯視現象を発見したためである。錯視の効果測定を優先的に計測した結果、新しい現象発見であることが明らかとなり、学会等での発表へとつながった。
計画されていたヒト心理実験により、光沢画像、陰影画像、一様画像の色の認知を色名呼称実験により比較する。以上3つの画像条件でサル下側頭皮質の色選択性細胞がどのような応答を示すのかを実験により確かめる。もし変化が見られれば、それはどの条件で強くなるのか。またそれはヒト心理実験で得られる結果と対応がつくのかどうかについて議論する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (25件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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