公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ヒトは見ただけで、モノの触った感じも瞬時にわかる。本研究では、ヒトのこの能力を触覚的質感視と名付け、その脳過程の解明を目的とする。触覚的質感視は、視覚皮質だけではなく、視覚系・触覚系・情動系システムの3者の協調的な働きによって実現されていると我々は考えている。本研究では、視覚・触覚・情動協働仮説を、微妙な質感の制御が可能な実物の布を実験刺激としたfMRI実験によって検証することで、触覚的質感視の脳過程の解明を目指す。初年度は、その第一歩として、触覚による布の質感知覚に関与する脳領域を同定するためのfMRI実験を行った。fMRI実験に先立って行った視覚および触覚による官能評価にもとづいて、4種類の布を選択し実験刺激として用いた。それぞれの素材は、1. シルク、2. ナイロン/ポリウレタン、3. 麻、4. 綿/ポリエステル/ポリウレタンであった。官能評価では、視覚的にも触覚的にも、1と2は柔らかく滑らかで、3と4は硬く粗いと評価されたものだった。実験では、被験者が右手で布刺激を能動的に触っているときの脳活動をfMRIで測定した。布を触っているとき、左右の中心溝前後の運動野と体性感覚野、島皮質、前頭葉内側の補足運動野、および右の小脳に強い賦活が見られた。柔らかい布と硬い布を触っているときの脳活動を比較したところ、前帯状回、左右の上頭頂小葉、下頭頂小葉の活動に差が見られた。これらの領域の活動が、触感や情動を含む布の触覚的質感の知覚に関与していると考えられる。今後の研究で、視覚的呈示による布の質感知覚に、これらの領域がどのように関与するかを明らかにしたい。
3: やや遅れている
視覚の実験の開始が遅れている。当初は実物体で布刺激を提示する予定だったが、提示装置のノイズの問題、企業との協業の中断により、映像提示に変更した。
視覚実験に関して、実物体提示を中止し、映像提示に変更した。手軽な静止画では布の高質感画像を得るのが困難だったが、高画質な動画であれば、実物に近い質感が感じられることがわかった。今後、布変形の高精細な動画を刺激として視覚実験、引き続き、触覚実験を行い、研究の完遂を目指す。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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