研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25135723
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
天野 敏之 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (60324472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プロジェクタカメラ系 / 質感制御 / ライトフィールド / 拡張現実感 |
研究概要 |
本研究は平成23年度から24年度にかけて行われたプロジェクタカメラ系を用いた質感制御を発展させ,ライトフィールドを採用することで物体の全周囲で視線に応じた異なる見かけを提示する質感制御を実現させることを目標としている.具体的には,全周囲の見かけを制御するためのプロジェクタカメラ系の配置とその協調制御方法を開発する.また,制御対象の同一領域に複数プロジェクタで重畳投影するライトフィールド投影と,再帰性反射塗料を表面に塗布した制御対象を用いることで,視線方向によって見かけが変化する反射特性を再現する.これらによって,金属やガラスだけでなく,真珠や玉虫,光学ディスクのような構造色を有する物体のように制御対象の見かけを変化させる質感制御を実現する. 平成25年度は,まずプロジェクタとカメラに加え,ビームスプリッタおよび迷光吸収機構を一体化したプロジェクタカメラユニットを設計製作した.また,ベローズ形の暗幕シートによる明光処理方法を考案し,これによって装置の小型化を実現した.以前の研究で試作した装置では,プロジェクタとカメラユニットが一体化していなかったため,装置を机上に設置する必要があったが,新たに制作した装置は一体化しているだけでなく,小型であるため三脚による自由な配置が可能となった. さらに,平成25年度には再帰性反射を用いたライトフィールド投影による構造色物体の質感表現を実現するために,再帰性反射面を用いた映像提示に関する基礎検討を行った.具体的には.3台のプロジェクタを用いて異なる方向から映像を重ねて投影し,視方向によって映像が遷移する様子を確認した.また,ビームスプリッタを用いてプロジェクタの投影中心を通過する線上で反射強度を調べた.この結果,再帰性反射のBRDFは拡散反射による定数分と混合ガウスモデルによる再帰性反射項によってモデル化できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では,S1. 複数の合焦点プロジェクタカメラ系により制御対象の全周囲に対して効率良く見かけの制御を適用するためのプロジェクタカメラ系の配置とその協調方法を明らかにする.S2. 制御対象の同一領域に複数プロジェクタで重畳投影するライトフィールド投影と,再帰性反射塗料を表面に塗布した制御対象を用いることで,任意のBRDF(双方向反射率分布関数) もしくはBTDF(双方向透過率分布関数) を制御対象上に再現する方法を明らかにする.という,2点を研究期間内に明らかにすることを計画しており,平成25年度には,主にS1に関する内容として,A1. 全周囲投影プロジェクタカメラ系の設計・製作,A2. プロジェクタカメラ系の協調制御方法の検討,A3. 再帰性反射塗料の選定,A4. BRDF・BTDF の再現方法の検討の4点を行うことを計画していた. 研究実績の項目で述べたように,今までにプロジェクタカメラユニットを試作しており,A1.については計画通り進展している.また,A2.については協調制御についてプロジェクタカメラ系の簡単なモデルを用いたシミュレーションにより検討を行っており,これらについては計画通り実施できている.A3.とA4.については再現方法については検討にとどまっているものの,再帰性反射シートを用いた実験より再帰性反射のBRDFモデルは確立しており,着実に進展している.以上の状況を総合的に判断すると,現状ではやや遅れているという評価が妥当であると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように,現在までの達成度はやや遅れているが,遅れが生じているのはBRDF・BTDFの再現方法の確立と検証についてである.そのため,現在は計画書で述べたとおり,この遅れを取り戻すべくライトフィールド投影によるBRDFの再現方法に関してProf. Oliver Bimberに助言を頂いている状況である. 今後の研究では,この遅れを取り戻すと同時に,全周囲見かけの制御を完成させ,さらに真珠や玉虫,光学ディスクのような構造色を有する物体のように制御対象の見かけを変化させる質感制御を実現させるために,研究計画・方法に従って研究を進めて行く予定である.
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