公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
運動視の重要な問題の一つとして窓問題が挙げられる。小さい窓枠から物体の運動を見たとき、可視線分に垂直な動きの方向しか検出できないため、真の運動方向を決定できない。理論的には少なくとも2つの成分が検出できれば、真の運動方向を検出できる。どのようにして方位の統合が行われているのかを知ることは運動視の計算メカニズムを理解する上で重要である。これまでに、サル大脳皮質MT野において、時空間周波数成分や方位成分が限られた視覚刺激(gratingやplaid)と多くの時空間周波数成分や方位成分を含んだランダムドット刺激との運動方向・速度選択性を比較した結果、ランダムドット刺激ではより正しく真の運動方向・速度を検出できることを報告してきたが、今年度は本成果を論文化した。また、今年度はMST野からの記録を開始し、ランダムドット刺激における運動方向・速度選択性のデータを得た。MST野の多くの細胞は、速い速度に選択性を持っていた。そのため、MST野ニューロンが運動の成分に反応していたのか、真の運動方向に反応していたのか評価が難しかったが、少なくとも要素に反応していると思われる細胞はなかったと考えられる。したがって、MST野ニューロンの方位の統合能力はMT野と比べ、大差ないと考えられる。次に、MST野ニューロンの速度選択性の空間分布のマッピングを行った。具体的には、受容野内を4x4の16か所に分割し、各部位での速度選択性を調べた。記録細胞数が少数ではあるものの、MT野と比較し、MST野ニューロンの速度選択性の空間分布の異方性が強いということはなかった。
2: おおむね順調に進展している
大脳皮質MT野において、時空間周波数成分や方位成分が限られた視覚刺激(gratingやplaid)と比較して、ランダムドット刺激ではより正しく真の運動方向・速度を検出できることを解明した成果を論文化できた。MST野ニューロンの速度選択性の空間分布の計測を開始することができた。
MST野ニューロンの速度選択性の空間分布の計測を継続するとともに、自然画像、あるいは自然画像に近い刺激に対する反応をMT野、MST野で測定する。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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