剛体の並進運動の検出を超えた一段進んだ複雑な運動の空間パターンを捉えることができるニューロンがあるのかを調べるため、ニューロンの運動方向や速度選択性の受容野内分布を測定し、その均一性を評価した。具体的には、受容野内を空間的に分割し、局所でランダムドットを提示し、場所によって運動方向や速度の選択性が変わるかを調べた。 まず、速度選択性が受容野内の位置によって変わるのかをMST野で調べたところ、速度選択性が均一なものがあった一方で、速度選択性が場所によって変わるものもあった。次に、運動方向と速度の両方を変動し、マッピングしたところ、運動方向-速度選択性がほとんど変わらない細胞があった一方で、運動方向-速度選択性が場所によって変わるものもあった。 MT野でも同様の実験をした結果、場所によって運動方向-速度選択性が変化するものがあった。場所によってどの程度選択性が変化するのか、選択性の類似度を定量化するため、異なる2つの場所での選択性の相関を計算し、各ニューロンで全ての場所のペアの相関の平均を計算したところ、MT野、MST野、どちらでも、受容野内相関が高く、運動方向や速度選択性が受容野内であまり変化しないニューロンと、受容野内相関が低く、運動方向、速度選択性が変化する細胞とが混在していることがわかった。 以上の結果から、MT野もMST野も剛体の並進運動以外の動きの検出に役立つ可能性があると考えられる。
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