公募研究
本研究では感性的質感に関する体系的な評価モデルを確立し,光学特性から感性的質感を推定したり逆に所望の感性的質感から必要な物理特性を特定しCG表現したりする技術を実現することを目指している.素材感性モデルに基づくCGアニメーションの作成研究では,まず素材の印象と物理特性の関係を階層的に表現するための「素材感性モデル」を提案した.また織布の印象構造と力学特性および織り構造との関係性を明らかにした.これにより,直観的な見た目の印象から力学特性や織り構造を推定し,簡易にリアルな布のアニメーションを出力できること示した.応用としてデジタルカタログの作成などが考えられる.また布素材に固有の質感を再現する技術の1つとして,織布の蛍光特性に着目し, multi-band BRDF/BTDFによって蛍光特性を持つ織布固有の輝きや透け感を表現する方法を検討した.計測した蛍光スペクトルと励起スペクトルより蛍光色と強度を算出し,BTDF近似モデルと織布の織り構造のパラメータを用いて反射光と透過光を算出する.推定した太陽光スペクトルの下でのレンダリング結果では,計測した蛍光特性を持つカーテンは,蛍光特性を考慮しない結果と比較して,青色の成分が強くなっていることがわかる.このことから,蛍光特性が物体色に大きく影響を及ぼしていることが確認され,織布の高品質なCG表現に対する蛍光特性のシミュレーションの重要性を示すことができた.また真珠の輝きを化粧素材に応用する化粧料の開発では,まずCGシミュレーションを用いて真珠の光学現象(巻き感・にじみ感・きめ感など)を再現し,この光学現象を人の顔型の表面反射特性に適用し,さまざまな真珠の輝きを持つ化粧顔画像を作成した.さらにこれらの画像を用いて化粧素材としての印象評価(カバー力・なめらかさ・仕上がり感など)を行ったところ,真珠のにじみの光学現象と印象評価因子に関連があることがわかった.
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通りの進捗を達成している.ただし,個人特性を考慮した感性的質感評価モデルの構築に関して,解析に十分なデータ数が得られなかった問題があった.また織布の質感のモデル化においてテクスチャの影響が大きいという問題が発生した.
来年度も予定通り研究を実施する.ただし25年度において問題となったデータ数とテクスチャの課題については,経費の一部を繰越して,追加実験を実施する予定である.
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
精密工学会誌
巻: 79 ページ: 1165-1170
http://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nagata/