公募研究
本研究は、物体の形態や材質を推定し、如何なる感覚受容器・脳領域が推定に貢献しているのかを明らかにすることによって、触覚の質感認知機序の理解をすることを目的とした。そのために、2頭のマカクサルから末梢体性感覚ニューロン群、広域大脳皮質活動、筋活動、上肢の運動軌跡を同時に記録し、物体は把持中の手の運動に対する感覚受容器・脳領域の貢献度をスパース直線回帰法により検討した。その結果、自分の意思で物体を把持する随意運動であっても、手の筋活動の30%は末梢感覚ニューロン由来の脊髄反射で生成され、残りの70%は大脳皮質からの脊髄運動ニューロンへの下行性入力により生成されていることが分かった。末梢感覚ニューロンの投射先である体性感覚野の活動の起源を解明する目的で、体性感感覚野活動を末梢感覚ニューロンと他の大脳皮質領野の活動から説明することを試みた。その結果、自分の意思で物体を把持する随意運動中の体性感覚野の活動は、末梢感覚ニューロンと体性感覚野ニューロンによって生成されていることが明らかになった。一方で、体性感覚野の活動は、驚いたことに物体に接触するずっと前に活動し、手の運動、筋活動更には体性感覚ニューロンの活動ニューロンよりも早い時間で活動が観られ、運動を生成する運動野の活動とほぼ同じ時間に活動が開始していた。この体性感覚入力がない時間に活動を開始する体性感覚野の活動は、運動野活動により推定できることが分かった。また、この先行する体性感覚野の活動は、麻酔下で他動的に物体を把持する時と同じように手の運動をさせたときにには消失した。この結果は、これまで物体の触覚を知覚する体性感覚野には物体に接触する前に、あらかじめ次に起こる予測される体性感覚入力情報が大脳皮質運動野から入っていることが明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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