Wada et al. (2010) は単一個体での食材の劣化過程を撮影した写真を用いて鮮度判断と画像の輝度分布情報の関係を示した。また、Murakoshi et al. (2013) は個体差と時間差の両者を含む魚眼画像のセットを用い、それらの画像から鮮度 判断を行う場合でも、輝度分布の標準偏差と歪度から鮮度についての尺度値が予測できることを示し、個体差を含む場合でも輝度分布情報が鮮度の手がかりとして有効であることを明らかにした。今回は、さらに多個体・多時点での魚眼の画像について鮮度の高低の強制二肢選択課題を実験参加者に行わせた。その結果が Murakoshiらの鮮度判断モデルと合致するかどうか検討した。その結果、多個体、多時点のサンプルに対する鮮度判断閾を輝度分布の標準偏差と歪度を独立変数としたMurakoshiらのモデルからある程度予測できることが示された。さらに、色を予測変数に加えることで格段にフィッティングが良くなることを見いだした。このアプローチにより、人の生鮮食品の品質判断の閾値を視覚手がかりから計測・予測する技法が開発できた。 また、モモの品質のエキスパート知覚についても検討した。落下試験と放置時間により体系的にモモの品質を操作し、エキスパート (n=1) の目視による傷面積の判定を行った。その結果、落下試験3日後の評定では、おおよそ落下回数と落下高度の増加に伴った評定値の増加が見られた。さらに判定されたモモを撮影し、その画像からのパラメータを抽出してエキスパートの判定と相関が高い変数を探索した。評定値0の個体の画像に多く含まれる色と、7の個体の画像に多く含まれる色を特定し、画像パッチ中の両者の画素数の割合を求めたところ、評定値との相関が高いことがわかった。
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