公募研究
本研究は「好ましい」という正の情動にかかわる神経回路、神経活動を特定し、視覚認知から情動反応が誘起される神経機構の解明を目指した。H26年度は視覚認知から生じる情動状態を客観的に捉えるために、音声コミュニケーションが豊かな小型霊長類であるコモンマーモセットを用いて正負の情動に関連する音声の特定を試みた。正の情動が誘起される状況で、マーモセットが一貫した発声を示さなかった一方、負情動である恐怖と不安について、それぞれ異なる音声(Tsik/Tsik-egg)が観察された。これらの結果から、マーモセットは恐怖と不安の情動状態で異なる発声による情動表出をしており、逆にこれらの音声を手掛かりに、情動状態を客観的に評価できることが明らかとなった。次に視覚から情動につながる神経経路を特定するために、化学遺伝学的手法の一つDREADDをサルで利用できるよう、手技の確立を進め、動物が生きた状態でDREADD発現が確認できるPETイメージング法を開発した。視覚刺激から価値判断を生じる神経回路を特定するために、視覚刺激と価値との連合をもとにした報酬獲得行動を利用して、辺縁系、特に線条体腹側部の各部位が価値判断や情動反応にどのように関与するかを調べた。2頭のサルの吻内側尾状核の神経細胞に発現させた抑制性DREADDをCNO投与により活性化させることで、神経活動を抑制した場合に、価値判断が特異的に障害されることが繰り返し確認された。この結果より視覚から正情動の価値判断に必須となる神経情報の流れとして、側頭葉視覚野―前頭眼窩野-吻内側尾状核という神経経路を特定することができた。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Behavioural brain research
巻: 275 ページ: 43-52
10.1016/j.bbr.2014.08.047
http://www.nirs.go.jp/research/division/mic/group/t_system-bunshi.html