研究領域 | 質感認知の脳神経メカニズムと高度質感情報処理技術の融合的研究 |
研究課題/領域番号 |
25135737
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
下川 丈明 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 専任研究員 (30645312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 形状推定 / 逆光学 / 光沢 / 質感 / 逆問題 |
研究概要 |
質感の中でも物理的対応物が明確である光沢感に注目して研究を試みた。ヒトは一枚の光沢物体画像からでもその物体の光沢の度合いを評価することができる。しかし、どのような視覚処理を経てそのような判定が行われているかについては分かっていない。ところで、光沢と物体形状との間には強い関係があることが知られている。まず、光学的な画像生成過程により光沢のパターンはその物体の3次元形状に大きく制約される。また、光沢パターンが物体3次元形状と矛盾無く一致するかどうかにより知覚される光沢感の度合いが変化することも知られている。 これらにより、光沢知覚を考える際には形状知覚についても同時に考える必要性があると考えられた。その際、同新学術領域のメンバーにより、光沢物体やテキスチャが貼り付けられた物体の画像特徴量とその物体形状との間にある関係性についての先行研究を教えていただいた。それによると、画像の局所的な方位はテキスチャ物体の場合は形状の傾き、光沢物体の場合は形状の曲率と関係があるということである。 そこで、それらの関係性を用いることで画像から物体の3次元形状を復元することが可能かどうかを調査した。まず最初のステップとしてテキスチャ物体画像から、その形状を推定することを試みた。ヒトの一次視覚野で行われているような画像からの方位情報抽出をフィルタ処理により行い、その方位情報をアルゴリズムによって加工することで、その結果、3次元形状を復元することが可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では多量の3次元形状をランダムに作り、多量の光沢物体画像を生成し、それらから光沢パラメータを抽出することを想定していた。計画に従い実際に大量の光沢物体画像を生成した。しかし、光沢知覚が物体形状との無矛盾性に依存するという最新の研究成果を考慮すると、以下のような疑問点が生じたため方針を大きく転換することとした。 まず、物理的に正しい光沢物体画像セット内で光沢パラメータを探る研究では、上記に挙げたような物体形状との無矛盾性について何も述べることができず、研究の意義が薄いと感じられた。ただし、研究範囲を広げ、そのような無矛盾性との関係をも調べるためには、物理的にありえないような画像をも大量に作成することが必要となる。そのようなありえない画像は多彩でありバイアスなしに調べつくすのは困難であると考えられた。また、うまく画像生成できたとしても、物理的に正しいかどうかの判別は単純な機械学習では難しいことが予想された。 ヒトは物体の認識において、光沢といった質感知覚と同時に形状も知覚していると考えられる。そのため画像から質感パラメータのみを抽出するだけでなく、形状についても抽出することがヒトの視覚処理を探る上で必須であると考えられる。しかし、一枚の画像から質感と形状を求めることは逆問題として不良設定性が非常に高く、解くことは困難であるとされている。しかし、今回の試みにより、先行研究成果をうまくモデルとして組み込むことで、思いがけず、そのような困難な問題を解ける可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに考案した画像からの3次元形状推定アルゴリズムは、現時点である程度成功している。しかし、不自然な解が得られるケースも存在する。アルゴリズムを改善し、よりヒトの知覚に近い、もしくは真値に近い形状推定を行えるようにする。また、特定の表面特性を持つ物体画像からの形状推定に限定せず、様々な表面特性を持つ物体画像からの形状推定を行えるようにする。 また、ヒトの形状知覚を心理実験により計測し、その特性を調査する。具体的にはgauge figure taskといった手法を用いて知覚された形状を取り出す。それによりヒトの形状知覚の特性、例えば、ヒトの形状知覚は観測情報だけでなく様々なpriorに大きく依存しているが、そのpriorの特性を調査する。また、知覚された形状と、アルゴリズムによって推定された形状とを照らし合わせることで、ヒトの視覚における計算過程について探求する。 さらに、例えば、考案中の形状推定アルゴリズムと、形状が与えられた元で質感パラメータを推定する先行研究のアルゴリズムとを組み合わせることで、画像のみから質感パラメータの抽出が可能となる。このような研究の発展が可能であるかどうかを模索する。また、当初計画していた、幅広い質感パラメータを抽出するために機械学習・統計的手法を利用する方法等について、形状推定アルゴリズムの組み込みをも考慮に入れて模索する。
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