研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
25136703
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
黒川 洵子 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (40396982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 不整脈 / 性差 / ヒトiPS細胞 / 性ホルモン / 交感神経 / イオンチャネル / 心臓安全性評価 |
研究概要 |
不整脈の性差を統合的に理解するために,平成25年度は主にウェット実験データを取得した。以下に,実績を示す。 1)性ホルモン受容体非ゲノム経路の定量的データの取得:げっ歯類心室筋細胞において,一分子FRETプローブを用いたcAMP/PKAのイメージングを行った。前半の公募研究からL型CaチャネルがcAMP依存的にプロゲステロンにより調節されることを明らかにしていたが,今回は,膜ラフト依存的なcAMP/PKA活性を計測し,プロゲステロン受容体活性化により,膜ラフト近傍でcAMP/PKA活性が抑制されることを薬理学的に明らかにした。 2)ヒトiPS心筋成熟化心筋の開発:ヒトでの催不整脈作用を評価するために,iPS由来分化心筋に成熟化因子Xを遺伝子導入することにより,成人心室筋に似た性質を持つ心筋を得ることに成功した(特許出願済み).心室筋インシリコモデルから成熟化因子Xの成分を減弱させることにより,ヒトiPS心筋活動電位と似た波形を得ることに成功した。本技術による成熟化心筋から心筋シートを作成したところ,IKs阻害剤では反応しないが,HERG阻害剤をさらに添加すると著名な再分極の遅延が引き起こされた。これは,臨床で見られるヒト心室の再分極予備能であり,ヒトiPS心筋を用いて初めて示すことが出来た. 3)心筋タンパク発現の性差解析:新生児マウスのDNAマイクロアレイ実験から,心臓発生時の形態変化に重要な遺伝子に明確な性差があることを同定した。心筋カリウム(IKs)チャネルのトランスジェニックマウスを用いたLC/MS/MS解析実験から,新たな心筋イオンチャネル膜複合体を同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性ホルモン受容体のシグナルについては,これまでみてきたイオンチャネル解析と細胞内シグナルが同じシグナル経路であることを薬理学的に証明することが出来たことが大きな進展である.インシリコモデルについては来年度に向けて着手した. ヒトiPS心筋の成熟化については,臨床での薬剤が心電図QT間隔へ与える影響を思いの外定量的に記述することができ,予想以上に大きく進展した. 性差の網羅的解析についても,かなり分子を絞ることに成功しており,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
性ホルモン受容体シグナルの影響をインシリコモデルに組み込むことを目指す. ヒトiPS心筋モデルについては,機能的な成熟化に必要な遺伝子Xの量がどのように調節されているのか,ウェットとドライの両方の側面から明らかにしていく. 網羅的解析によって同定された新たな機能制御の分子メカニズムを電気生理学的手法と生化学的手法を組み合わせることにより明らかにしていく.
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