本年度は、相互相関分光法FCCS(fluorescence cross correlation spectrometry)による生細胞内分子間相互作用の測定を中心に研究を進めた。 (1) 蛍光相互相関分光法FCCSを用いた生細胞内分子間相互作用の定量的測定法の開発:当初はFCCSとGatewayによる組換えを利用した網羅的な分子間相互作用の測定法の開発を試みたが、実用化には至らなかった。一方、CRISPR-Cas9法の進展により遺伝子をノックインすることが容易になってきており、この手法を用いて内在性の分子の濃度と相互作用を測定することを試みた。これに関しては、ノックインがうまくできるところまでは確認できた。 (2) FCS、FCCS法とFRAP法を組み合わせた膜上の分子間相互作用の測定:FCS、FCCS法の弱点は膜上の分子のように拡散速度が遅いものの拡散をとらえることが難しい点である。これにより、現状は膜上の分子間相互作用を測定することができない。この問題点を克服するためのイメージング技術を検討した。細胞膜を微小な体積であると仮定し、細胞質と細胞膜の体積比をFKBP-FRB-Rapamycinの系により定量化することで体積比を見積もった。さらに、細胞膜に局在する分子と細胞質に局在する分子の解離定数をFCSと体積比により定量化することに成功した。
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