ミトコンドリアを介した洞房結節自動能制御のメカニズムを明らかにすることを目的として、平成26年度は以下の検討を行った。 単離した洞房結節を用いて、洞房結節細胞の電子顕微鏡像を取得した。その結果、ミトコンドリアと筋小胞体の面積比はそれぞれ約15%、4%であった。また、ほぼ全てのミトコンドリアが筋小胞体と近接していた。一方、筋小胞体の約35%がミトコンドリアと近接していた。さらに、3D-SEMを用いて洞房結節細胞の三次元立体構築を行い、洞房結節細胞においてはT管がほとんど発達していないことを確認した。 上記実験データをもとに、ミトコンドリアと筋小胞体の面積比、両オルガネラの近接する割合などを、前年度構築した2種類の簡易洞房結節細胞モデルに導入し、精緻化した。シミュレーション解析から、ミトコンドリアNa-Ca交換輸送体NCLXの自動能発生における寄与を調べた。その結果、Caクロックで駆動されるモデルではNCLXはリズムを促進したのに対し、膜クロックで駆動されるモデルではNCLXの効果がなかった。Caクロックで駆動されるモデルでは、細胞膜直下のsubsarcolemmal spaceに全ての筋小胞体が局在すると仮定している。洞房結節ではT管がほとんど発達していないことを考え合わせると、実際の洞房結節細胞ではミトコンドリアNCLXのリズム発生における寄与はほとんどないと考えられた。 以上の成果を学会発表するとともに、総説として論文発表した。
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