研究実績の概要 |
生命機能の理解および予測医学を実現するための心臓興奮シミュレーションには、イオンチャネルと薬物作用における膨大な情報が蓄積されているが、近年になって分子同定されたTRPチャネルの心臓における役割やデータの蓄積は、未だ不十分である。 TRPチャネルは、酸化ストレスや酸性条件などで活性化される生体ストレス感知分子であることが知られているが、心臓での機能や不整脈発生機序における詳細な分子メカニズムは不明である。はじめに、心臓における不整脈基質として見出されたTRPM2の役割を分子、細胞、組織や個体レベルといった多階層で包括的にTRPM2の役割を示すことを目標としている過程で、まずTRPM2の活性化機構の解明を行った。その結果、活性酸素種で活性化されるTRPM2がCD38やEFHC1といった相互作用たんぱく質によっても活性調節されることを見出し、これらが分子、細胞レベルで細胞増殖、細胞死に関わることを報告した(Numata et al, J Physiol 2012, Katano et al, Cell Calcium 2012)。さらに、多階層において、このTRPM2の役割を組織、個体で知るためにTRPM2欠損マウスを用いた敗血症モデルにて、TRPM2が細菌のクリアランスに関与し、組織、個体に対して保護作用を持つことを示した(Qian et al, Anesthesiology 2014)。
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