公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本領域では,生体機能の本質的理解のために、統合的多階層生体機能学推進のための基盤システムを構築し,生体機能モデル記述言語PHML(Physiological hierarchy markup language)で記述した生体モデルを,シミュレータFlintでシミュレーションしている.このシミュレーションは非常に多くの計算量を必要とするので,Flintの並列計算による高速化が重要である.本研究では,ヘテロ計算でのFlint高速化技術の開発を目的とする.ここで,ヘテロ計算とは様々な並列計算機が混在する環境,具体的には,グラッフィクスプロセッサGPU,マルチコアCPU,PCクラスタ,さらには「京」などのスーパーコンピュータが混在する計算機環境を用いた計算である.平成25年度は,ヘテロ計算の基礎となる,GPU単体,マルチコアPC単体,スーパーコンピュータ「京」で稼働するトランスレータ(コンパイラ)方式のシミュレータを開発した.約12万心筋細胞,約460万個の微分方程式を含む心臓モデルFSKに関して実時間4秒間(0.005ミリ秒間隔で80万ステップ)のシミュレーションを次の性能で実行できる.スーパーコンピュータ京の場合,1コアで約6.6日,32コアで約4.8時間(台数効果約32倍),256コアで約1時間(台数効果約161倍)であり,良好な台数効果である.GPU Tesla K20mを1台装備のPCの場合,約2時間であり,これも実行性能がよい.このようなシミュレーションの高速化により,例えば心室筋細胞の膜電位ダイナミクスを再現する生体機能モデルの研究が加速し,薬物動態から心臓電気生理までの統合的にシミュレーションでき,新しい強心薬ベスナリノンの濃度に依存して心臓が正常な動きに戻ることの確認できている.
2: おおむね順調に進展している
本研究で開発した並列シミュレータが実際に使われており,ユーザグループから処理速度に関して良好な評価を得ている.
「研究実績の概要」には,現在,本研究代表者が保持する最大規模の生体モデルのシミュレーション時間を示した.シミュレーションそのものは台数効果よく実行できているので,生体モデルが大規模なものを対象とする場合でも,実行効率よくシミュレーションできる可能性が高い.一方,シミュレーションコードの生成は約5時間を要する.シミュレーションの内容がグラフとして表現され,そのグラフが大規模になるからである.生体モデルの作成は試行錯誤するので,シミュレーションコードの生成時間は,生体機能の研究全体を考えるとボトルネックになる.したがって,シミュレーション実行だけでなく,シミュレーションコードの生成も並列処理で高速化することが重要である.
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Advanced Biomedical Engineering
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IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems
http://physiodesigner.org/phml/index.html
http://www-hagi.ist.osaka-u.ac.jp/