公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
本研究では、体内小分子である無機リン酸イオンをモデルにし、骨細胞と多臓器を結ぶ新しいリン代謝シグナル、リンの恒常性維持機構を解明する。そして複数臓器の支配するリンホメオスターシスを多階層的に理解する分子基盤を構築することを目的としている。平成25年度は、1.骨細胞を死滅させたマウスにおけるリン代謝を詳細に解析し、2.血中リン恒常性維持を担う液性因子の探索を行なうためのシステムを立ち上げることを中心に取り組んだ。1.骨細胞死滅マウスにおけるリン代謝骨細胞死滅数と尿中リン排泄の程度には正の相関があることが明らかとなった。さらにリン利尿因子として、血清FGF23濃度の著しい低下と血漿PTHの上昇が見いだされた。これらのホルモンの濃度変化も骨細胞死滅数に応答していることが分かった。また腎臓でリン再吸収を担うナトリウム依存性リン酸トランスポーター (NaPi-IIa, NaPi-IIc)の減少、腸管リン吸収を担うNaPi-IIbタンパク質の減少も骨細胞の死滅数に依存することが明らかとなった。最近我々は新しいリン代謝経路としてニコチンアミド/Nampt経路を見いだした。骨細胞死滅マウスにおいても、この経路の活性化による、NaPi-IIa,NaPi-IIc, NaPi-IIb 発現減少の可能性を見いだした。2.骨細胞死滅マウスにおける血中リン恒常維持を担う血中液性因子の探索我々は、骨細胞死滅マウスにおいてナトリウム依存性リン酸トランスポータータンパク質の発現量が減少することから、腸管に絞って網羅的な遺伝子発現解析を行なった。興味深いことに、複数のホルモン作用を持つ因子の変動や脂質代謝関連因子の変動を見いだした。この中から、骨細胞死滅マウスの血中リン濃度維持に関与する因子の同定のため培養細胞系(腸管、腎臓)を用いて検討している。
2: おおむね順調に進展している
平成25年に計画していた研究はおおむね着手することが出来た。また、本研究成果から、リン恒常性維持機構において骨細胞と腎臓および腸管には臓器連関があることが明らかとなった。
現状では、おおむね実験計画にそっておおむね順調に進展している。そのため研究推進方策としては、当初の実験計画に沿って研究を進める。平成26年度は最終年度となるため、これまでの成果をまとめることも重要である。研究成果を用いて、リンホメオスターシスを多階層的に理解するための分子基盤構築を目指す。
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