公募研究
生体には、体内時計が存在し、時計遺伝子により制御されている。異物の代謝や排泄に関わる多くの代謝酵素やトランスポーターも日周リズムを示す。シスプラチン (CDDP)の副作用として腎障害があり、CDDP 療法の用量規制因子になっている。腎臓の CDDP を輸送するトランスポーター Organic cation transporter 2 (OCT2) と Multidrug and toxin extrusion 1 (MATE1) が、 CDDP 誘発性腎障害に重要な役割を担っている。一方、この腎障害は CDDP の投薬時刻により異なることが知られているが、その機序は明らかにされていない。昨年度は、マウスを対象に CDDP 誘発性腎障害に及ぼす投薬時刻の影響について検討し、その機序を体内時計の分子機構の側面から解明した。本年度は、マウスを対象に CDDP の体内動態に及ぼす時間制限摂食の影響について検討した。摂食タイミングは明暗サイクルと同様に強力な体内時計の同調因子である。そのため、摂食時間帯を操作することで、末梢組織における時計遺伝子の概日振動の位相をずらし、最適な投薬タイミングを調節することが可能となる。そこで本研究では、摂食時間の操作がCDDP による腎障害を軽減させる最適な投薬時刻を調節できる可能性を検討するため、CDDP の体内動態に及ぼす時間制限摂食の影響を評価した。自由摂食条件下において夜行性のマウスは主に暗期に摂食を行うが、摂食時間を明期のみに制限したところ、マウスの腎臓において、Per2 と Pparα の発現リズムの位相はほぼ逆位相にシフトした。この末梢時計の位相変化は、Slc22a2/OCT2 の発現リズムの位相にも影響を及ぼし、腎臓細胞中へのCDDP蓄積の投与時刻依存性を変化させたと考えられた。以上のことから、CDDP 誘発性腎障害を軽減させる最適な投与時刻は、摂食時間の操作によって調節できることが示唆された。その他のトランスポーター及び臓器についても解析を進めており、同様の成果をあげている。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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