公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ラット肺動脈狭窄モデル(Banding Model)心筋の乳頭筋を摘出し、細胞内Ca2+濃度と張力の同時測定を行った。機能測定後、組織固定を行い、マッソン染色を行った。得られた染色結果からBanding Modelを線維化のない肥大心筋(Hypertrophy)群と線維化のある肥大心筋群 (Fibrosis)に分類した。右室圧負荷心肥大によって発症する線維化には中間状態がなく、明確に二相性に分類できるモデルであることが確認された。一方で乳頭筋径と細胞短軸面積はHypertrophy群とFibrosis群で同等であり、心肥大は同等であると考えられた。このモデルを線維化発症モデルとして網羅的解析をDNAマイクロアレイにて施行したところ、Fibrosis群とHypertrophy群の間で有意差があったのはNcam1とFGF23であった。qRT-PCRにてNcam1とFGF23のmRNA発現が有意に増加していることが確認され、線維化特異的因子である可能性が示唆された。これらNcam1とFGF23が線維化特異的因子であることを確認するため、他動物モデルでの検討を試みた。拡張型心筋症(DCM)モデルマウスは野生型マウスと比較して心筋線維化面積は有意に増大していた。このモデルマウスに対して、圧負荷心筋で明らかになった線維化特定増加因子の検索を行ったところ、野生型と比較してNcam1とFGF23のmRNAレベルは有意差を持ってDCM群で増加していた。Ncam1とFGF23は、これまで心肥大に関連していることが示唆されていたが、線維化特異的因子であることは判明していない。本研究では非線維化群では両因子が増大していないことから、非常に特異的な線維化関連因子であることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
ラット肺動脈狭窄モデルを用いて、線維化特異的因子を導出したこと。その因子と線維化との関連を他動物モデルでも支持する結果を得たこと。現在、運動負荷モデルでも心筋線維化と特異的因子のqRT-PCR解析を施行しており、ほぼ同様の結果を得ている状況である。以上のことから、慢性心疾患における線維化発症特異的因子であることが強く示唆する結果を得ている。この結果は線維化と特異的因子が関連しているのか否かについての状況証拠として十分なレベルに達していると考えられるので、研究は順調に進展にしていると考える。
本研究で明らかになった線維化決定因子に関連した線維化発症メカニズムを同定する作業と臨床応用への可能性を見据えた研究を進めていく。FGF23は元々血中リン濃度の調節に関わっている因子として研究されていたが、近年になって心肥大との関連が報告されている。しかしながら、心臓線維化との関連はいまだ明らかにされていない。一方でNcam1も本来の名前であるneural cell adhesion molecule 1として記載されているように、一般的に神経系への発現で報告されてきた。最近になって虚血性心疾患における関連性が最近報告されたが、心臓線維化との関連は明らかにされていない。これまでこれら二つの因子が線維化特定増加因子として明らかにならなかったのは、線維化の有無で分類できるモデルが無かったことに起因すると考えられる。具体的な方法として、(1)組織中のタンパクレベルでの発現をLC/MS/MSを用いて確認する、(2)細胞レベルでの実験を行い、これら関連因子のリコンビナントタンパク投与にて線維化移行の有無について確認する、(3)モデル動物での血中濃度・尿中濃度を測定し、心機能と線維化と関連因子の増加傾向との比較を確認する。これらを遂行することで、新たな線維化メカニズムの提唱と線維化移行における新規バイオマーカーの同定が可能になるものと思われる。
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