公募研究
新学術領域研究(研究領域提案型)
ミトコンドリアはATP産生以外にCa貯蔵・制御器官としても機能する。ミトコンドリアからのCa放出は内膜のNa/Ca交換体(NCX)により行われるが、虚血時など細胞内Na+濃度が上昇するような条件下では、ミトコンドリアNCXと細胞膜NCXが協調的に細胞内Ca2+を増加させる方向に働くことが推測される。また、ミトコンドリアからのCa放出は筋小胞体のCa再充填に寄与すると考えられ、細胞膜、ミトコンドリアおよび筋小胞体間の動的Ca制御は心機能維持や心不全発症機序に重要であることと想定されるが、統合的理解には至っていない。本研究では、これらミトコンドリアNCXの分子実体NCLXの発現を増減させた遺伝子改変マウスと、申請者が既に保有しているNCX1遺伝子改変マウス(遺伝子欠損および心筋特異的高発現)との相互交配により、両者の相対的イオン輸送バランスを変えたモデルマウスを作出し、ミトコンドリア-細胞膜間の統合的Ca制御の心機能維持における役割を個体レベルで解析し、その制御異常と心不全発症の機序の解明を目指す。平成25年度は、NCLXのホモ欠損マウスの作製に成功したため、本マウスの血圧および心機能を測定した。その結果、NCLXホモ欠損マウスの体重、収縮期血圧および心機能は野生型マウスと比べて有意な差は見られなかった。現在、NCLX欠損マウスとNCX1遺伝子改変マウスとを交配しており、両者の相対的イオン輸送バランスを変えたモデルマウスを作製中である。
2: おおむね順調に進展している
申請当初はNCLXのヘテロ欠損マウスを樹立していたが、平成25年度にはホモノックアウトマウスの作製に成功した。また、心筋特異的NCLX高発現マウスも作製中である。平成25年度は、NCLXのホモ欠損マウスの作製に成功したため、本マウスの安静時の血圧および心機能を測定し、野生型マウスと比べて有意な差が見られないという結果を得ている。また、当初の予定通りNCX遺伝子改変マウスとの相互交配を行っているが、NCLXホモ欠損マウスが作製できたことから、NCLXの欠損がヘテロとホモの2種類を得る必要があるため産仔を得るのに時間を要しており、各種刺激時の血圧や心機能などの測定は平成27年度に行う。
平成27年度は、NCLX欠損マウスとNCX1遺伝子改変マウス(遺伝子欠損および心筋特異的高発現)との相互交配により得られた産仔の血圧、心臓の形態学的変化、心機能解析を行う。また、これらマウスより単離心筋細胞を調製し、電気刺激下でのCaトランジェントを測定する。また、細胞質bulk相、ミトコンドリアマトリックス、膜マイクロドメイン、ER-ミトコンドリアマイクロドメインの局所Caシグナルを各種蛍光蛋白プローブを用いて解析する。また、これらマウスを用いて薬剤誘導(ウアバイン、イソプレナリン)および圧負荷誘導(TAC)の心肥大・心不全モデルを作製し、ミトコンドリア-細胞膜間の動的Ca2+制御と心機能維持および心不全発症機序の関係について解析する
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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http://resweb2.jhk.adm.fukuoka-u.ac.jp/FukuokaUnivHtml/info/4535/R110J.html?P=Sat May 17 00:23:48 UTC+0900 2014