研究領域 | 統合的多階層生体機能学領域の確立とその応用 |
研究課題/領域番号 |
25136724
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
中條 浩一 生理学研究所, 分子生理研究系, 助教 (80390699)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオンチャネル / カリウムチャネル / KCNQ1 / KCNE1 / 電気生理学 / 蛍光イメージング / QT延長症候群 |
研究概要 |
KCNQ1は修飾サブユニットKCNE1の存在下で大幅に(40~50mV)電位依存性が変化し、非常に開きにくいチャネルになることが知られている。この「開きにくさ」が心臓の電気活動に非常に重要である。KCNE1によってどのようなメカニズムでKCNQ1が開きにくくなるのかについてはよくわかっていない。 本年度はKCNQ1チャネルの電位センサードメイン、特に4番目の膜貫通領域(S4セグメント)の動きを膜電位固定化で直接測定することを目的に、Voltage-clamp fluorometry法をあらたに導入した。S4セグメントの外側の219番目のグリシン残基にシステイン残基を導入し、そこに蛍光物質Alexa-488 maleimideを結合させた。これにより脱分極時のS4セグメントの動きを蛍光強度変化を介してリアルタイムに測定することが可能になった。作業効率を考慮し、当初予定していた倒立顕微鏡ではなく、マクロズーム顕微鏡を採用した。この顕微鏡を使用することで通常の2本刺し膜電位固定法と変わらない操作性を得ることができ、実験効率を大幅に向上することができた。 Voltage-clamp fluorometry法の適用により、KCNQ1/KCNE1チャネルにおいては、S4セグメントの動きに、大きくて速いものと小さくて遅いもの、2つのコンポーネントがあることがわかった。2つの動きのキネティクス自体はKCNE1があってもなくても変化がなく、KCNE1存在時では遅いコンポーネントの割合が大きくなっていることがわかった。速いコンポーネントは脱分極時の電位センサーの垂直方向の動き、遅いコンポーネントはチャネルが開くときの変化に相当すると考えると、KCNE1は電位センサーの動きとチャネルの開閉のカップリング状態を変化することでKCNQ1を開きにくいチャネルに変化させていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最終的な目的は、KCNQ1/KCNE1複合体の異なるストイキオメトリー間でのゲーティング機構の違いを調べることと、それを考慮にいれた新しいKinetic Modelを提案することである。Kinetic Modelを作るためには、イオンチャネルの電流だけではなく、電位センサードメインの動きを理解することが必要不可欠である。本年度の研究成果により、あらたにVoltage clamp fluorometry法を導入することに成功し、イオンチャネルの開閉と電位センサードメインの動きを詳細に比較検討することが可能になった。本年度得られた電位センサードメインとチャネルの開閉のカップリングに関するあらたな知見とあわせ、異なるストイキオメトリーで何が異なっているのかを詳細に解析するための準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
すでに準備してあるKCNE1とKCNQ1のタンデムコンストラクト、KCNE1-KCNQ1(4:4チャネル)とKCNE1-KCNQ1-KCNQ1(4:2チャネル)を用い、KCNE1の結合数が異なる場合に、電位センサーの動きや、電位センサーの動きとチャネル開閉のカップリングにどのような違いが生まれるのかを検討する。具体的には本年度に導入したVoltage-clamp fluorometry法を活用し、タンデムコンストラクトにAlexa-488 maleimideを結合することで、四量体のKCNQ1チャネルの各電位センサードメインの動きを詳細に測定・解析していく。
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