研究領域 | 新興国の政治と経済発展の相互作用パターンの解明 |
研究課題/領域番号 |
26101503
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
河野 元子 政策研究大学院大学, 政策研究科, 研究助手 (80552017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ポリティカル・エコノミー / 新興国 / 東南アジア / 中所得国の罠 / 経済停滞 / 比較研究 / 自然資源産業 / ゴム産業 |
研究実績の概要 |
東南アジア新興国は、政府主導の開発戦略で著しい経済発展を遂げた。しかしながら、先進国入りを前に「中所得国の罠」、国内格差、社会保障など山積みの政治的課題に苦闘している。問題解決のための新しい経済発展のシナリオづくりに向けては、自国の経済構造がいかなるものかの再考と、社会の構成員間の社会的政治的調整の理解、すなわち統合的なポリティカル・エコノミーによる分析が重要と考える。このような視座にもとづいて、本研究では、申請者の研究蓄積があるマレーシア、隣国タイ、新興国予備軍インドネシア3国の国家間比較を行うことを目的とする。 平成26年度においては、まず、広く新興国におけるポリティカル・エコノミー関係の文献サーベイを行った。顕示比較優位指数(RCA 指数)使って、アジア通貨危機以降のマレーシア、タイ、インドネシアのデータ分析を行って、2002年~2012年の3ヶ国における輸出構造を明らかにしつつ経済構造の変動把握につとめた。この分析により、従来の研究で着目されてきた製造業と同様に、農漁業・鉱業など自然資源が高い割合を占めていることを確認した。 一方で、新たな経済構造転換をめざしていかなる産業が着目され、高付加価値化がすすんでいるのか、それが各国の国際競争力にどのようなインパクトを与えたのかを明らかにするため、具体的な産業としてゴム産業に着目し、フィールド調査および文献調査をマレーシアおよびタイで行った。川上から川下部門でのフィールドワーク、政策・社会経済変動に関するデータ収集、農民・加工業者・R&D機関の研究者・行政官および学識経験者のインタヴューを行った。その結果、各国の現在抱える問題を明らかにすることができた。マレーシアにおいては、高いR&D能力があるにもかかわらず、ゴム生産とゴム製造部門間のミスマッチが起き、かつマレー優遇政策のためにそれが助長されていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
輸出における国際競争力分析は、予定の3ヶ国について完了するとともに、新たな分析視点がみえてきた。来年度は比較分析として、隣国の新興国の分析もめざす。 マレーシアおよびタイの調査については、現地調査、文献調査、インタビューともに予定したものをおおむね完了させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成27年度においては、前年度に引き続き、マレーシア・タイでの現地調査および文献調査を継続して行う。インドネシアについては、文献調査に絞って比較材料を収集するようにする。 国際競争力の分析は、3ヶ国以外の新興国の比較分析も行って、より精緻化をめざす。現地での聞き取り・資料調査の結果も統合させつつ、各国の経済構造の特色を明らかにすると同時に、経済成長のあり方の共通性と多様性を抽出することを試みる。 ゴム産業の比較研究については、前年度で得た知見を深め、社会経済的および政策、政治的要因について補充調査を行う。各国独自の背景にもとづいて生じる問題、障害について比較分析を行って、将来にむけた各国のなすべき対応、その可能性を提示する。 得られた知見は統合して発表する予定である。5月に新学術母体での国際ワークショップでの報告、12月に国際学会での報告を行い成果を発信するとともに、批判やコメントを得て、最終成果の完成に役立てる。
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