本研究の目的は、正確な目撃記憶をできる限り早い段階で獲得するために英国で開発されたSelf-Administered Interview(SAI)の日本語版(目撃者遂行型調査)を作成し、その効果を検討するものである。平成26年度は、目撃者遂行型調査の作成および大学生を対象にした実験を行った。初めに、目撃記憶の研究者2名によってSAIの日本語翻訳を行い、目撃者遂行型調査を作成した。 第1実験として大学生180名を対象に実験を行った。実験参加者は、犯罪ビデオの視聴直後または1週間後に、ビデオの内容について目撃者遂行型調査、認知面接(記憶促進のテクニックを用いた面接法)、または自由再生により供述を行った。結果は、直後・1週間後のいずれにおいても、目撃者遂行型調査による記憶成績は、他の方法による記憶成績より高かった。しかし、目撃者遂行型調査による記憶の再生では他の方法による再生と比較して、正しい記憶とともに、間違った記憶の想起も多かった。これは、英国で行われたオリジナル実験の結果を再現するものとなった。 第1実験終了後、目撃者遂行型調査内の日本語の見直しを検討するため、さらにもう1名の心理学研究者がSAIの日本語翻訳を行った。合計3名で翻訳を行ったものをまとめた後、さらにその日本語の文章を目撃者遂行型調査を知らない研究者が英語に翻訳をする作業を行った。これらを通して、オリジナルSAIの再現性を図った。 その後、研究実施計画の第2実験を開始した。第2実験では、実験参加者は犯罪ビデオの視聴直後と1週間後の2回、目撃記憶の再生を行う。視聴直後は、目撃者遂行型調査を含む3種類のいずれかの方法で目撃供述を行い、1週間後はすべての実験参加者が自由再生によって供述を行う。それにより、目撃者遂行型調査による記憶の持ち越し効果を検討する。現在、本実験は続行中で、データ収集段階である。
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