2014年度の研究で、市民が法律や司法に違和感を覚える傾向の高かった「少年法」、「触法精神障害者」、「法律上の父子関係」、「時効制度」をとりあげ、法律でそう定まっている理論的な背景を教示することにより、それらに対する市民の違和感が低減されるかについて検討した。 本調査では、ネット調査会社に登録している年齢層、居住地、性別に偏りのない510人を対象とした。調査参加者には、各事柄についての法律でそう定まっている理論的な背景に加え、関連データを示した。例えば、少年法については、①少年法の適用年齢、②少年法の理念、③具体的な年齢別の処遇内容、④刑罰の対象となる14歳以上20歳未満の人口に占める、検挙された少年、再犯少年、凶悪少年の割合の推移(平成18年~平成27年)を示したグラフ、⑤平成19年と平成26年に少年法が改正された内容を示した。参加者には、上記の4つの事柄ごとに、提示した情報を参照した上で、関連する複数の意見について、1(そう思わない)~5(そう思う)に加え、6(質問の内容が理解できない)の中から回答を1つ選択するよう求めた。結果の分析にあたっては、6(質問の内容が理解できない)の回答が1つ以上あった者は、分析対象から除外した(408人を分析対象とした)。 その結果、4つの事柄それぞれについて、違和感に潜在的に影響する2つの因子が抽出された。「触法精神障害者」については抽出した因子と年齢との間に、「法律上の父子関係」と「時効制度」については抽出した因子と性別との間に有意な相関がみられた。法律の理論的背景についての知識を提示した場合でも、違和感を軽減することは困難であったことから、社会通念上の価値観から現行法が乖離していることが違和感をもたらす主要因であること、そして、違和感の程度は年齢や性別によって異なることが示唆された。
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