研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
26102502
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐田 和己 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80225911)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 化学反応 / 温度応答性高分子 / グラッブス触媒 / アロステリック |
研究実績の概要 |
高分子と相互作用するエフェクターの濃度を化学反応によって変化させ、高分子の劇的なコンフォーメーション変化とそれに伴う高分子が溶解・凝集を、化学反応の進行に応じて制御するシステムの構築を検討した。尿素官能基を持つ高分子の水素結合を利用し、すでにエフェクターとして知られている1-デカノールやデカン酸などを用いて、トルエンや1,2-ジクロロエタン中で水酸基およびカルボン酸と反応する試薬(エステル化剤(酸クロリドなど)やシリル化剤(TMSCN,TMSIMなど)、など)を混合することで、高分子の凝集・相分離を評価した。酸クロリドなどを用いると、副生成物がエフェクターとして機能するため、反応の進行とともにアルコールの量が減少するものの、副生成物が増加し、結果的に高分子の溶解性に変化を及ぼさないことが明らかになった。しかしながら、TMSCNを用いたヘキサノールのシリルエーテル化反応を選択することで、エフェクターの化学反応によって高分子のコンフォメーション変化の誘起に成功した。この場合は副生成物がシアン化水素であり、水素結合性が弱いためと思われる。したがって、エフェクターの化学反応を選択する際には副生成物がエフェクターとして機能しない反応を用いることが必要であることを明らかとした。平行して、オレフィンメタセシス反応を触媒するグラッブス触媒を尿素官能基を持つ高分子へ導入することに成功した。さらに予備的ではあるが、この高分子が閉環メタセシス反応に適応可能であることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低分子の化学反応によってそれとは直接反応しない高分子の劇的なコンフォーメーション変化とそれに伴う高分子の溶解・凝集が制御できることを明らかにした点が最も重要な結果と思われ、本申請研究のアイデアの根幹が立証できたから。同時に触媒サイトであるグラッブス触媒の高分子への導入が可能になった点も重要と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、尿素官能基を持つ高分子へのグラッブス触媒を導入について、条件の最適化を検討する。エフェクター分子の濃度に対応したコンフォーメーション・溶解性の変化およびオレフィンメタセシス反応の触媒能を評価する。エフェクターである1-ヘキサノールとTMSCNとの反応を行い、再生反応として、シリルエーテルの水による分解等を検討する。オレフィンメタセシス反応のエフェクターの化学反応を同時に行うことで、オレフィンメタセシス反応のON-OFF制御を検討する。
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