リポソームと酵母のCOPIIタンパク質(Sar1GTPase、Sec23/24複合体、Sec13/31複合体、Sec12)を用いて、試験管内でCOPII輸送小胞を生成させ、その分子機構を解析した。Sar1は、Sec12GEFによって活性化され膜上へ移行してコート形成の核となるが、Sec24GAPによって不活化され膜から脱離する。COPII小胞の大きさは直径約60 nmである。本研究では、様々な大きさのリポソームを調製し、①Sar1の活性を検出するトリプトファン蛍光、②コートの形成を検出する散乱光の二つの手法を用いて、膜の曲率がSar1活性化とコートの安定性におよぼす影響を解析した。その結果、直径約60 nmのリポソーム上では、直径約200nmのリポソームと比べて、Sec12のGEF活性が2倍に促進してSar1が活性化され、コートの崩壊が抑えられて約2割のコートが崩壊せずに安定化した。曲率が高まった小胞上ではSec12の活性が上昇し、コートが維持されることが明らかとなった。以上の成果は、現在投稿準備中である。 アルツハイマー病の原因となるアミロイドβ(Aβ)の小胞での形成機構についても、ヒトのγセクレターゼとアミロイド前駆体を発現した酵母を用いて解析を行った。ミクロソームからCOPII小胞を生成させ、Aβを検出した結果、小胞内でAβ生成が促進することが明らかとなった。さらに、酵母発現系を用いて、Aβ生成に影響をもたらす化合物をスクリーニングした結果、脂質プラズマローゲン(phosphatidylethanolamine plasmalogen)が、Aβ生成を阻害することが明らかとなった(J. Biochem. 2015)。また、γセクレターゼの触媒サブユニットであるプレセニリンについて、家族性アルツハイマー病変異体の異常活性を回復する活性化スクリーニングを行い、Aβの生成を抑制することに成功した(J. Biol. Chem. 2016)
|