真核細胞内の小胞輸送における小胞形成は、コートタンパク質が低分子量GTPaseによる調節を受けながら連結・重合していくのを駆動力としている。この反応において、コートタンパク質が時空間的に制御されながら膜上に集合し、秩序だって重合しながら膜を変形させていった後に膜をくびり切り、特定の物質を詰め込んだ膜小胞が形成されるという一連の過程については不明な点が多く残されている。本研究では、出芽酵母の小胞体における小胞(COPII小胞)形成反応に注目し、反応に関わる因子群が膜上で繰り広げる動的な秩序形成の原理について解析を行う。平成27年度は、昨年度に実験系の拡張を行った、顕微鏡下に形成させた人工脂質平面膜上にCOPII小胞形成反応を再構成して可視化する実験系を用いて、COPII小胞形成過程におけるコートタンパク質のダイナミクス解析を行った。その結果、COPII小胞の外殻を形成するSec13/31コートタンパク質は、COPII小胞の形成において中心的な役割を果たす低分子量GTPaseであるSar1が膜からの解離した後も安定して膜上にクラスターを形成していることが明らかとなった。また、Sar1のヌクレオチド交換因子を行うSec12は、膜上でCOPIIコートが形成するクラスターから排除を受けることが明らかとなった。これらの結果から、COPII小胞の形成過程において、COPIIコートの連結反応と、その反応の調節を行うSar1との時空間的な関係が明らかとなった。
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