研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
26102513
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
上野 隆史 東京工業大学, 生命理工学研究科, 教授 (70332179)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バクテリオファージ / 超分子 / タンパク質 / 自己集合 |
研究実績の概要 |
本研究では、バクテリオファージT4由来の蛋白質から合成した分子針の細胞膜透過性の高効率化と、細胞内の動的挙動制御を目的とする。具体的には、申請者が構築した分子針を基盤に、針先端部分の先鋭化や、針長を分子レベルで調節し、機能制御を達成する。これまでも、多くの細胞膜透過材料が報告されているが、その細胞毒性や高効率化に克服すべき課題が残されている。加えて、近年では、数十から数千の蛋白質を集合化して、チューブやカプセル、ケージ等を構築する研究がすすめられているものの、天然の蛋白質集合体が持つような巧みな機能を再現するには至っていない。その理由は、静的な蛋白質集合体の構築に主眼が置かれ、生体内での機能発現に重要な蛋白質集合体の動的挙動に着目した研究がほとんど進められていないことにある。本研究で持ちた蛋白質分子針が、実際に細胞を透過し、さらにHSAFM観察から針状構造に依存した膜との相互作用形態をとることが明らかとなった。また、各種物理化学的手法により、分子針表面の化学的特性と、末端の構造的特性がその膜貫通能に影響を与えている結果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、針の長さや先端構造を調整することによって細胞の取り込みを評価する予定であったが、高速AFM測定により、一分子レベルでモデル膜との相互作用形態を観察することに成功し、新しい分子挙動を見出すことが可能となったため。特に、統計的な解析から、膜との接触時のタンパク質針は、まさに針が刺さるような配向で相互作用していることが明らかとなり、分子設計に大きな指針を示すデータとなった。
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今後の研究の推進方策 |
膜透過へのドライビングフォースを解明するために、計算等、他の物理化学的測定と組み合わせた解析をすすめる。具体的には、QCMを用いた、分子針の膜接触と乖離の速度論的解析と、パッチクランプ法を持ちいた、細胞膜の静止電位の効果の検証をすべく、最適なシステムを構築する。同時に、従来のタンパク質針とは異なる先端構造をもつタンパク質を合成し、それらの比較をすすめる。
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