公募研究
カルシトニンはカルシウム代謝に重要な役割を果たしているペプチドホルモンであり、骨粗鬆症の治療薬としても使用されているが、高濃度中性水溶液中で容易にアミロイド線維を形成して沈殿する性質が知られている。本研究ではヒトカルシトニン(hCT)のアミロイド線維形成過程を解明するため、固体NMR、TEMおよび分子動力学計算の手法を用いて線維形成反応機構の解析、線維の立体構造決定を行い、hCT線維形成の分子機構を明らかにすることを研究の目的とする。固体NMR信号の測定により、ヒトカルシトニンは2段階自己触媒反応機構でアミロイド線維が形成すること、中央部が線維形成の過程でαーヘリックス構造からβーシート構造に転移することを明らかにした。また、電子顕微鏡でHEPES溶液中での線維形成を観測したところ、線維形成前駆体として球状中間体の存在が明らかになった。さらに、球状中間体から線維が成長する過程を直接観測することに成功した。次に、13C,15Nで二重標識したヒトカルシトニン線維を用いて、固体NMRにより精密原子間距離測定を行い、これまで明らかになっていない酸性条件で生成するヒトカルシトニンアミロイド線維の精密立体構造決定を行った。この結果、逆平行βーシートと平行βーシートが混在した線維構造をとっていることを示唆する結果が得られた。次に線維形成阻害剤として知られているクルクミンの線維形成阻害機構について固体NMR測定から解析し、核形成段階が阻害されることが判明した。ヒトカルシトニンとクルクミンの系について分子動力学計算を行い、クルクミンとヒトカルシトニンが相互作用を持つことが判明した。この結果は、クルクミンが核形成の段階を阻害する機構であることを指示している。本研究によりカルシトニンの線維形成機構およびクルクミンによる線維形成阻害の分子機構が明らかになった。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
Reactive and Functional Polymers
巻: 99 ページ: 9-16
10.1016/j.reactfunctpolym.2015.12.002
J. Magn. Reson
巻: 254 ページ: 27-34
10.1016/j.jmr.2015.02.002
Phys. Chem. Chem. Phys.
巻: 17 ページ: 9082-9089
10.1039/c5cp00476d
Photochem. Photobiol. Sci.
巻: 14 ページ: 1694-1702
10.1039/c5pp00154d
Annu. Rep. NMR Spectrosc.
巻: 86 ページ: 333-411
10.1016/bs.arnmr.2015.06.001
Biochim. Biophys. Acta
巻: 1848 ページ: 2789-2798
10.1016/j.bbamem.2015.07.019