研究実績の概要 |
KaiAとKaiBのKaiCへの結合は, KaiC単量体にある2ヶ所のリン酸化部位のリン酸化状態に依存することが知られている。そこで, リン酸化をミミックする変異体(S431D)と脱リン酸化をミミックする変異体(S431A/T431A)に対して, KaiAおよびKaiBとの複合体形成を観察した。 リン酸化あるいは脱リン酸化KaiCを配向制御して基板に固定し, 観察溶液にKaiAを加えて観察を行った。リン酸化変異体では, CI側へのKaiAの結合は全く見られなかった。一方, CII側ではKaiAが結合と解離を繰り返す様子が見られた。KaiAのKaiCへの結合時間を解析したところ, 時定数約0.9 s 程度でKaiCから解離することがわかった。脱リン酸化KaiCでもKaiAのCI側への結合は見られなかったが, CII側へのKaiAの結合時間が大幅に伸び, ほとんど解離しないことがわかった。KaiAがKaiCのCII側にのみ結合することは, いろいろな手法によりこれまで提唱されてきたモデルと一致するが, KaiCのリン酸化状態に依存して結合時間が変わることを初めて明らかにした。 次に, KaiCとKaiBの相互作用について調べた。リン酸化KaiCでは, KaiBのCII側への結合は観察されたが, その頻度は非常に少なく数秒で解離した。一方, CI側ではKaiBのモノマーがKaiC六量体リングにリング状に結合することがわかった。KaiBがリング状に結合しているKaiCと1個も結合していないKaiCの両方が存在することから, KaiBのKaiCへの結合に何らかの協同性があることが示唆された。脱リン酸化KaiCではCIとCIIの両ドメインに対して明らかなKaiBの結合は見られなかった。KaiBのKaiCへの結合に関して, これまでCI側とCII側のどちらに結合するか, 相矛盾する実験データが提示されていたが, 今回の高速AFM観察からCI側に結合することが明瞭に示された。
|