公募研究
膜蛋白質は膜平面上で制限された拡散運動を行い、同種蛋白質間で集合・離散を行うものがある。しかし膜蛋白質の中でもイオンチャネルは、細胞膜上でごく少数のチャネルで細胞機能を担うものもあり、自己組織化によってチャネル機能の発現にどのような関連があるのか十分に検討されてこなかった。最近私達は原子間力顕微鏡(AFM)によってチャネル蛋白質の新しい動的秩序構造を発見した。チャネルはゲート開閉構造変化に連動して膜上で可逆的な自己組織化を行うのである。一方、チャネルと膜脂質の相互作用がチャネル蛋白質の新しい構造モチーフ(センサーヘリックス)を介して行われており、しかもセンサーヘリックスがゲート構造変化を制御することも発見した。この2つの発見から導かれることは、チャネル機能発現においてチャネル蛋白質の構造変化が膜脂質との相互作用を変化させ、チャネルの膜内での孤立状態と自己組織化状態の遷移を引き起こしている、というシナリオである。本研究の目的は、分子内構造変化から超分子集合体形成にいたるチャネルの新しい動的機能発現様式の分子機構を明らかにすることである。チャネル機能測定に対する新しい方法を確立し、電流と蛍光の同時測定が可能になった。またAFMは高い空間・時間分解能の測定を目指し実験を進めつつある。さらにチャネル分子動態を明らかにするために分子動力学法を適用し、イオンの新しい透過様式を発見した。これらの実験と平行して、複数の協同研究を開始し、実験を進めつつある。
2: おおむね順調に進展している
チャネルの膜上での振舞いを明らかにするための新しい方法を開発し、論文として発表した。この方法は膜の曲率などを変化させることができ、集合・離散への影響を検討することができる。またチャネルの膜上のオリエンテーションを制御する方法を開発しつつあり、これを原子間力顕微鏡(AFM)で高分解能で観察している。一方、集合離散をより高い時間分解能で観察するために、高速AFMの観察を協同研究として進めている。
AFMの測定が高分解能になるにしたがって、さまざまな実験上の困難が現れてきた。しかしこの課題を解決することが本プロジェクトのブレークスルーにつながるはずであり、集中して実験を進める。これらの問題は基本的なリポソーム作成法や脂質平面膜法、さらにチャネル蛋白への変異導入などの基本的技術を組み合わせることによって解決の糸口をたどりつつある。本年度は平行して進めている技術的課題を克服し、新しい結果を得ることである。これによって来年度の統合的過程に進めることができる。新しく開発した脂質平面膜法が共同研究者の課題解決に有用であることがわかり、さらに共同研究を推進する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (2件)
BBA Biomemb.
巻: 1848 ページ: 145-150
org/10.1016/j.bbamem.2014.10.001
Sci. Rep.
巻: 5 ページ: 9110
10.1038/srep09110
Journal of Molecular Liquid
巻: 200 ページ: 52-58
10.1016/j.molliq.2014.03.050
生物物理
巻: 55 ページ: 005-010
10.2142/biophys.55.005
J. Phys. Chem. Lett.
巻: 5 ページ: 578-584
org/10.1021/jz402491t
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 3636(1-7)
10.1038/srep03636
http://seiri1.med.lab.u-fukui.ac.jp/
http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/22_letter/data/news_2013_vol2/p17.pdf