研究実績の概要 |
まず、光学顕微鏡においてはっきりと観察可能な自律駆動高分子微粒子を得るために、pNIPAm微粒子内部に(4-vinyl-4’-methyl-2,2’-bipyridine)bis(2,2’-bipyridine)ruthenium (II)bis(hexafluorophosphate) (Ru(bpy)3)を共重合したミクロンサイズ微粒子を合成した。一連の電解質添加によりRu(bpy)3の電荷の影響を静電遮蔽効果によって1.4 μmまで粒子径を増大させることができた。それに加え、モノマーフィードによる沈殿重合法を駆使することで、約10 μmまで粒子径を増大させることができた。その他の重合条件を精査することで、単分散微粒子は最大3.4 μmまで、また、架橋密度を上昇させ、顕微鏡下でのコントラストを上昇させたものは最大3.0 μmまで得ることができた。続いて、得られた自律駆動高分子微粒子をガラス基板上にフィルム化する事が可能であった。フィルム化後も、個々の形状を明確に見分けることが可能であり、ベローゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応を生起させることで、個々の微粒子が周期的な膨潤・収縮する挙動を初めて確認した。更に、温度及びBZ反応基質濃度を精査することで、顕微鏡下において時間周期的に集合と脱離を繰り返す挙動を初めて確認する事が出来た。また、微粒子中に固定したRu(bpy)3錯体をセリウムイオンにより強制的に酸化還元状態とし、小角X線散乱法を活用することで、ミクロ構造の評価を行った。Ru錯体が酸化・還元状態いずれの場合も、温度上昇に伴いメッシュサイズ(相関長)は臨界温度において発散用挙動を示した。Ru錯体の酸化・還元状態における臨界温度が異なり、かつ酸化状態のほうが温度変化に対する上昇度が小さいため、体積振動をする一定温度下において、膨潤時よりも収縮時のほうがメッシュサイズは大きくなるという特徴的な現象を見出すことができた。
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