公募研究
黄色ブドウ球菌を種として選抜することによって、これまで大量に精製することが困難とされてきたFtsZとFtsAをmgオーダーで精製した。懸案となっていたFtsAのATPase活性を確認すべく、精製したFtsAのATPase活性を測定した。酵素カップリングの系を用いて測定したところ、野生型FtsAには小さな活性があり、変異体V211N FtsAにはその約10倍の活性があることが分かった。その理由を明らかにすべく、野生型FtsAとV211Nの立体構造を結晶構造解析によって決定した。その結果、ATP結合部位の水の構造とリン酸リリースパス周辺の立体構造が少し異なることがわかり、V211Nのみで高いATPase活性がある理由が明らかとなった。更に、FtsZとFtsAの結合比を決定するために、FtsZ-FtsA複合体を精製し、それをエレクトロスプレーイオン化質量分析法によって測定した。その結果、FtsZとFtsAは1:1の比で結合することが分かった。さらに、FtsZ-FtsA複合体を小角散乱法によって測定して、その複合体の立体構造を低分解能ながら決定することができた。
2: おおむね順調に進展している
黄色ブドウ球菌を種として選抜することでFtsA, FtsZともに大量かつ高純度の精製に成功し、またFtsA単体についてはX線結晶構造解析に成功した。FtsZ-FtsA複合体の相互作用解析にも着手できていて発展が見込まれる一方で、複合体の構造解析に関しては、結晶化には成功しているものの、構造解析が可能な高分解能データの収集が困難であった。そこで新たにX線小角散乱法に取り組んだが、これについては予想外に良いデータが得られ、FtsZ-FtsA単体の分子の外形まで決定できることができた。よって、おおむね順調に進展していると考えている。
FtsZ単体の多量体形成様式やFtsZ-FtsA複合体の構造決定にまでは至っていない。今後は、FtsZ-FtsAの協調現象メカニズムを解明すべく、酵素カップリング法や化学的リン酸定量法など幾つかの活性測定法を試験して最適化した後に、その協調現象を解明する。さらに、蛋白質間相互作用に着目した阻害剤探索を行う予定である。また、NMRより多くのX線小角散乱のデータの蓄積によって、FtsZ単体の多量体形成様式とFtsZ-FtsA複合体の立体構造の決定をしたいと考えている。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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