公募研究
本研究では、無細胞翻訳系を用いて細胞サイズ(1-5 um)のリポソーム内外でヒトのミトコンドリア由来膜タンパク質Letm1を合成し、これがリポソーム膜の形態変化という高次機能を発現するメカニズムを解明する。すなわち、Letm1の配列、リポソーム脂質組成などの実験条件とリポソーム膜の形態変化の関係性を調べる。2014年度は、内部でLetm1を合成した際のリポソーム膜の形態変化を定量化する実験系を確立することを目指した。具体的には、顕微鏡とフローサイトメーター(FACS)を用いた。まず、顕微鏡を用いてLetm1の膜への局在を確認した。Letm1のC末端に蛍光タンパク質mCherryを融合させた遺伝子を構築し、これをリポソーム内部に無細胞翻訳系とともに加えて内部で合成反応を行った。反応後の産物を共焦点顕微鏡で観察したところ、膜への局在を確認することができた。加えて、FACSでは、Letm1の合成に伴ってリポソームのサイズ変化を調べた。リポソームを調製する際に蛍光ラベルされたキャリアタンパク質(Transferrin AlexaFluor647 conjugate)を内部に加えることで、個々のリポソームのサイズをFACSで測定される蛍光強度から算出した。その結果、Letm1の合成に伴ってリポソームの平均サイズが小さくなることがわかった。また、様々な親水基をもつリン脂質を用いてリポソームを調製し、それぞれのリポソームでLetm1を合成した。その結果、リポソームサイズの変化がリポソームの脂質組成に依存することもわかった。
2: おおむね順調に進展している
2014年度は、計画していたLetm1の変異体や蛍光タンパク質との融合タンパク質を構築した。加えて、顕微鏡やFACSを用いた実験系を確立した。予定通り達成できているため、順調に進展していると考えている。
<リポソームの脂質組成、形態変化、Ca2+輸送活性の関係性の解明>Letm1はプロトンと共役してCa2+イオンを輸送するカルシウムチャネルである。そこで、Ca2+イオンの輸送活性を検出する実験系を構築し、リポソームの脂質組成、形態変化、Ca2+輸送活性の関係性を明らかにする。Ca2+イオンを検出するためには、蛍光インジケータであるFluo4、Calcium green1, Rhod2などを検討する。これらのうちからリポソーム内部からの漏洩が少ない化合物を選択する。次に、Letm1を合成してCa2+イオンの輸送活性を検出する。このときに、種々の機能欠失変異体をネガティブコントロールとして用いる。<Letm1配列とリポソーム形態変化の関係性の解明>リポソーム膜の形態変化にLetm1タンパク質の配列が及ぼす影響を明らかにする。Letm1は大きく分けて2つのドメイン、膜貫通ドメインとフレキシブルドメインからなる。そこで、Letm1のtruncated mutantを複数作成し、それぞれの変異体の形態変化やリポソーム融合に及ぼす影響を調べる。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
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