研究実績の概要 |
本研究では、無細胞翻訳系を用いて細胞サイズ(1-5 マイクロメートル)のリポソーム内外でヒトのミトコンドリア由来膜タンパク質Letm1を合成し、Letm1の機能発現のダイナミクスを調べることを目的とした。 これまでにリポソーム内部でLetm1を合成した際、C末端に蛍光タンパク質mCherryを融合させた遺伝子を用いることで、Letm1の膜への局在を確認した。加えて、リポソームサイズの変化がリポソームの脂質組成に依存することもわかった。 Letm1はプロトンと共役してCa2+イオンを輸送するカルシウムチャネルである。そこで、Ca2+イオンの輸送活性を検出する実験系を構築し、リポソームの脂質組成とCa2+輸送活性の関係性を明らかにした。Ca2+イオンを検出するためには、複数の蛍光インジケータを検討し、Fluo4を用いた場合に最も強いシグナルが観測されたためこれを選択した。次に、ミトコンドリア内膜を構成する主要な4種類の脂質、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、カルジオリピン(CL)、ホスファチジルイノトール(PI)を混ぜて作製したリポソーム内でLetm1を合成した。その結果、Letm1のリポソーム膜へ局在及びCa2+の輸送活性が確認された。このように活性型のLetm1を合成可能な実験条件を明らかにした。次に、Letm1が機能を発現するメカニズムの詳細を明らかにするために、Ca2+の輸送活性の脂質依存性を調べた。その結果、PC, PE, CL, PIの全てが存在するときにのみ活性が見られた。この結果は、Letm1の機能発現するためには脂質分子が重要な役割を果たしており、またこれらの脂質が協同的に働いていることを示している。
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