研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
26102529
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
菊地 和也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70292951)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | BL-tag / 低pH |
研究実績の概要 |
本年度は、細胞内蛋白質の特異的修飾法の開発の高機能化とその手法を用いたオートファジーの機構解明を目的として、細胞内低pH環境を可視化する技術開発を行った。我々は、細菌由来酵素(β-lactamase, TEM)を遺伝子工学の手法で改変したタグ蛋白質BL-tagを用いた新規蛋白質ラベル化法を開発してきた。BL-tagは、TEM酵素の基質結合中間体を加水分解する触媒グルタミン酸残基をアスパラギンに変異(E166N)させた蛋白質であり、この変異導入により触媒活性を無くしており、基質とBL-tagは共有結合を形成する。これまでに、基質に蛍光色素を導入した蛋白質標識プローブを開発し、BL-tagを融合させた蛋白質の生細胞蛍光イメージングに成功している。 低pH環境を可視化するために、BODIPYを基本骨格としてpH感受性蛍光プローブを開発した。試験管で標識反応を行いSDS-PAGEにより解析したところ、BL-tagとプローブが共有結合することが示された。次に、BL-tagを発現する培養細胞にプローブを添加し、細胞固定後、種々のpHを持つ緩衝液を添加し共焦点蛍光顕微鏡により観察したところ、pHの低下に伴い、細胞内から蛍光が観測されその蛍光強度が上昇することが分かった。更に、生細胞で同様の実験を行ったところ、生細胞においてもpH低下に伴い蛍光強度が上昇した。一方、BL-tag非発現細胞からは、蛍光は観測されなかった。以上の結果から、プローブは、細胞膜を透過しBL-tagを特異的に標識し、pHの低下を生細胞で検出することができることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生細胞で低pH環境を可視化する技術の開発が目標であり、BL-tagの低pH環境可視化プローブにより、達成されている。開発したプローブは、試験管でのpH滴定実験及び標識実験により目標とした性能を有しており、更に、固定細胞に加え生細胞でも、細胞内蛋白質の標識及び低pH環境検出に必要な性能を有している。以上の結果から、当初計画が順調に遂行されているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した蛋白質標識・低pH環境可視化技術を応用し、オートファジーの可視化を試みる。オートファジーは、細胞の飢餓状態時に観測されることから、培養細胞にBL-tagを発現させ開発したプローブにより標識し、血清飢餓の状態にしてオートファゴソーム形成後リソソームに移行するかを検討する。また、これと並行して、細胞膜近傍に存在する蛋白質を1分子イメージングする技術を開発する。これには、BL-tagの新規標識プローブとして、光安定性の高いSiローダミンを導入したプローブを開発する。このプローブを用いて、BL-tag融合蛋白質の1分子イメージングを行う。
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