アミロイド線維の核形成反応は、アミロイドーシスや神経変性疾患などアミロイド線維の沈着が関与する疾病群の発症に深く関与すると考えられている。しかしながら、詳細な分子機構は不明であるため、本研究では、伝播性をもつ核が形成する際にどのようなタンパク質分子の会合が進行し秩序構造を形成するのかについてのメカニズムを明らかにすることを目的としている。 H27年度は、これまでに見つけた線維前駆中間体を経由するインスリンの線維化経路に着目し、その初期段階に見られるタンパク質集合過程について時分割小角X線溶液散乱測定により追跡した。その結果、線維前駆中間体は柱状の形状をもつことと、線維前駆中間体が形成した後には、さらに集合化し構造発達する様子が明らかとなった。また、インスリン由来の30アミノ酸残基から成るアミロイド性ペプチドの線維化解析の結果、反応条件によっては比較的寿命の長い線維前駆中間体が観察できることを見つけた。この中間体は比較的均一なサイズを持っており、インスリンで見られた線維前駆中間体と同様にon-pathway中間体である可能性も期待される。また、連携研究者である神戸大学のルミアナツエンコヴァ教授の協力を得て、いくつかの塩の種類や濃度下でのインスリン線維化反応の近赤外吸収スペクトル測定を行った。その結果、アミロイド線維が形成される限りどのような条件下においても、核形成期の途中で水構造の変化が共通して見られる様子が確認された。
|