公募研究
シアノバクテリアでは3つの時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCが、生物時計の中心的なはたらきを担っている。3つのKaiタンパク質とATPを混合することで、KaiCのリン酸化型と非リン酸化型が24時間周期で往来するという生物時計再構成系が構築された。生物時計の理解には、次の3つの特徴(1)恒常条件下での自律的な24時間周期リズムを生み出す(2)温度補償性(周期が温度に依存しない安定性をもつ)(3)環境の周期的変化に対する同調、を解明することが必要である。(3)の同調機能は、生命が環境に適応して、自己システムを新しい秩序に再編成するという点において、そのメカニズム解明が重要である。Kaiタンパク質で再構成された時計もこの機能を備え、モノマーシャッフリングとよばれる現象により成立すると報告された。本研究では生物時計再構成系を用いて、生物時計同調の分子メカニズム解明を目指す。今年度は、まず再構成系におけるKaiCの六量体構造に着目しKaiタンパク質の高次構造変化をBN-PAGEで解析した。その結果,KaiCにはBN-PAGEで分離できる2種類の構造変化が確認された。一方、シアノバクテリア変異株のin vivoでの解析により、KaiC の422 番目のアラニン残基(A422)が変異することで、概日リズムは低振幅となりさらに時計の同調機能が阻害されるという重篤な変異形質を示すことが報告されている。本研究では、KaiC-A422Vタンパク質をin vitroで検証することで、時計の同調機能を解析する。今年度はKaiC-A422Vタンパク質を作製し、生物時計再構成系に供して解析した。KaiC-A422VとKaiAやKaiBとの反応の結果から、この変異型KaiCはin vitroでも細胞内と同様に極めて低振幅なリズムを生じることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
今年度の解析により見出した六量体KaiCの状態変化は、同調機能を成立させると推測されているモノマーシャッフリングとよばれる現象と同位相で生じると考えられる。モノマーシャッフリングは、KaiCが高リン酸化状態から低リン酸化状態へと変化する過程で起きているといわれている。六量体KaiCの状態変化とモノマーシャッフリングの2つの事象が同一の分子メカニズムによるか否かを検証することで、今後同調機能解明につながると考えられる。
上記ですでに述べたように、今後は我々が見出した六量体KaiCの状態変化とモノマーシャッフリングの2つの事象が同一の分子メカニズムによるか否かを検証する。また、さらにKaiC-A422Vの複合体形成能を観察するとともに、KaiC-A422Vにおいてモノマーシャッフリングの検証を実施する。
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Plant and Cell Physiology
巻: 56 ページ: 334-345
10.1093/pcp/pcu165