研究実績の概要 |
本課題では、Kaiタンパク質時計の離合集散過程を調べるため、X線溶液散乱と液中高速原子間力顕微鏡を用いる。X線溶液散乱では複数分子の信号の平均値を観察しており、一方、液中高速原子間力顕微鏡は条件が整えば1分子を解像する能力がある。これらの手法を相補的に駆使しつつ研究に取り組んだ。 小角散乱データを数日間にわたって安定的に取得することについてはノウハウの蓄積があったが(Akiyama et al., Molecular Cell, 2008)、広角散乱データについては新しい試みであるため条件検討から開始した。懸念されたとおり、一般的な実験方法では広角散乱データのベースラインを数日間にわたって安定に保つことが容易でないことが確認された。測定系については、ビームラインの担当者と綿密な連携をとって諸問題の解決に取り組んでいる。一方、試料についても対処が必要で、長期間にわたるインキュベーション等により試料の濃度や組成が僅かに変わってしまうなど、これらが信号に与える影響についても検討を行った。 液中高速原子間力顕微鏡については、基盤へのタンパク質分子の固定化に精力的に取り組んだ。タンパク質は粒子形状として観察されたり、中央部分に空孔を有するリング形状として観察されたりと、固定化する条件に応じて様々であることが確認された。条件を慎重に検証したところ、より安定的かつ選択的に固定化する方法が見つかった。塩の種類や濃度、またインキュベーション時間などを最適化することにより、リング形状がより明瞭に観察されるようになった。
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