研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
26102545
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
村田 和義 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 准教授 (20311201)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウイルス / 電子顕微鏡 |
研究実績の概要 |
ロタウイルスは病理学的にも構造学的にも非常に多く研究されている無エンベロープウイルスの一つである。しかし、ウイルス粒子が宿主細胞内で実際にどのようにして取り込まれ、複製されて構造的秩序を形成し自己組織化されていくかについての知見はほとんどない。本研究では、ロタウイルスを例としてウイルスの宿主細胞における侵入、複製、放出機構を最先端の電子顕微鏡技術を使って構造学的に解析し、その動的な構造秩序形成の過程を明らかにする。そして、これをもとに新しい自己組織化のモデルを提案する。 本年度は、ロタウイルスの複製過程をクライオ電子顕微鏡トモグラフィーにより解析した。宿主培養細胞にロタウイルスを感染させ、複製を開始するタイミングで細胞を固定し、これを樹脂に包埋する。そして、ウイルス粒子が入るぐらいの厚さ(約100 nm)で樹脂を薄切し、これを200kVの電子顕微鏡を用いて連続傾斜像(2°間隔、±70°)を撮影し、トモグラフィーによる三次元再構成した。その結果、ウイルス粒子の内部にロタウイルス特有の11本のRNAセグメントと思われる核酸の断片化した構造を確認することができた。これがRNAセグメントであることを確認するために、ウイルス粒子をトモグラムから切り出してアライメント後、平均化した。最終的に相同な15粒子が平均化された。その結果、正二十面体キャプシドの5回対称軸直下に延びるRNAセグメントを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において、ロタウイルスで最も興味深い問題の一つである11本のRNAセグメントの構造の一端を解析することができた点では、成果としては概ね順調であると言える。ただ、当初計画していたウイルスの侵入や放出における構造解析の方は、全体としてこれに寄与するウイルス自体の数が少ないため困難を極めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ロタウイルスのRNAセグメントの構造解析をさらに進めると同時に、主に複製過程、特にViroplasmと呼ばれるタンパク質凝集体との関係について、連続ブロック表面走査電子顕微鏡(SBF SEM)を用いて解析する。そして、ロタウイルスの複製機構に必要な宿主側の構造要素を観察し、宿主構造を含めた動的構造秩序形成の仕組みを解明する予定である。
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