平成27年度は、超分子集合体が示す時間発展現象とエネルギーランドスケープの相関を明らかにするために、さらに多くのポルフィリン誘導体を合成し、その自己集合プロセスを精査した。具体的にはポルフィリン分子に修飾したアルキル鎖の長さを、ブチル基からヘプチル基まで変え、その超分子集合体形成をスペクトル的な手法および顕微鏡観察によって評価した。熱力学パラメータを求め、これらの誘導体のエネルギーランドスケープを描くことに成功した。その結果、予期しない結果が得られた。 ペンチル基を修飾したポルフィリン分子は、ナノ粒子状集合体を経てナノファイバーへと形態転移した。一方、ヘキシル基を修飾したポルフィリン分子は、ナノ粒子状集合体からナノシートへと形態転移した。0次元の粒子状集合体が1次元のファイバー、あるいは2次元のシートへと形態転移できることから、このシステムのナノ材料設計への可能性を示すことができた。形態転移のメカニズムについては未だ不明な点が多いが、今後の研究展開によって、超分子集合体の時間発展現象を利用した新しい機能材料の創製につながると期待される。 また、自己集合プロセスの時間発展現象を可視化するために、金沢大学の内橋貴之教授(A01班)と共同研究を行った。高速原子間力顕微鏡観察によって、超分子集合体が基盤上で成長していく様子が観察された。これについては、上記の2次元シート状集合体についても、同様の観察に成功しており、動的秩序形成のメカニズム解明に非常に重要な知見となった。
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