1)ムライマイシン・ムレイドマイシンに関して、アルケンスキャンニング法により同定した酵素阻害活性に関与しないアミノ酸残基を、ジアジド含有アミノ酸に置換した光クロスリンクプローブを合成した。これらを用いてMraYとのクロスリンク実験を行ったが、クロスリンク体は得られなかった。2) ムライマイシン誘導体ライブラリーに関しては、固相合成法を用いることで、まずペプチド部変改誘導体29個を合成した。これらはすべて強いMraY阻害活性を保持した。in vivo抗緑膿菌活性評価を行ったところ、脂溶性アミノ酸残基や酸性アミノ酸残基を持つ誘導体は緑膿菌に対して全く無効であったのに対し、リシンやアルギニンなどの塩基性アミノ酸残基を有する誘導体は、抗菌活性を有する事がわかった。また、これらの誘導体は緑膿菌のみならず、広範なグラム陰性菌に対して有効であることもわかった。さらにin vivo黄色ブドウ球菌感染カイコ評価系による治療効果の評価を行ったところ、有意な治療効果を示す事がわかった。これらの誘導体は、細菌細胞膜透過に必要なアシル側鎖として長鎖飽和脂肪酸を有し、ヒト肝がんHepG2細胞に対する細胞毒性を示す事がわかった。そこで、毒性の軽減を目的として、アシル側鎖変換誘導体71個を固相合成し、各種生物活性評価を行った。その結果、分岐脂肪酸をアシル側鎖として有する誘導体が、MraY阻害活性と抗菌活性を保持しつつHepG2細胞に対する細胞毒性が低いことがわかった。
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