公募研究
天然物創薬研究ではシーズ探索の階層的生物評価系の確立が必須である。最初に、脳機能改善薬をスクリーニングするために、神経伝達物質遊離、脳内一酸化窒素遊離測定、神経細胞における Ca2+/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ II(CaMKII)活性、情動運動機能及び認知機能を評価する階層的生物評価系を確立した。これらの評価系を用いて、本研究では1)柑橘系果皮から抽出単離したノビレチンが T 型カルシウムチャネルを活性化して、海馬内でドパミン放出を促進すること、海馬神経細胞において CaMKII を活性化することを明らかにした。 CaMKII の活性化を介して、ドパミン合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素のリン酸化反応し、ドパミン合成が促進された。その結果、パーキンソン病モデルマウスである MPTP 処置マウスの認知機能と錐体外路系障害を改善した。次に、2)機能性食品(アミノ酸)である L-シトルリンが脳梗塞後の脳血管内皮細胞の一酸化窒素合成酵素(eNOS)を保護することにより、神経細胞死を抑制すること、L-アルギニン脳内投与法による一酸化窒素の産生が上昇することを明らかにした。その結果、脳梗塞モデルマウスでは、脳梗塞後の認知機能障害を改善された。これらの研究により、天然物ノビレチンおよび機能性食品 L-シトルリンの脳機能改善のメカニズムを解明し、有効性の医学的根拠を明らかにした。さらに、私達が構築した階層的生物評価系は天然物及び機能性食品の有効性を担保する新規の高次脳機能評価系として応用できる。
1: 当初の計画以上に進展している
柑橘系果皮成分ノビレチンや機能性食品 L-シトルリンはこれまでに末梢作用については多くの知見がある。しかし、中枢移行性が不明であることから脳機能改善作用のメカニズムは不明であった。最近、ノビレチンが中枢移行性に優れていることが他の研究により明らかになった。私達の研究は、経口投与したノビレチンが中枢で神経伝達物質の放出を促進することを示した初めての研究成果であり、今後、機能性食品としての開発を加速させることができる。実際に、ノビレチンを多く含む抑肝散がアルツハイマー病患者の周辺症状を改善するという臨床治験も得られている。
1)L-シトルリン投与によりeNOS の保護作用を明らかにした。実際に脳内で一酸化窒素(NO)の産生が亢進するのかマイクロダイアリシス法で確認する。2)新たにATP 感受性カリウムチャネルを賦活化して、脳機能を改善するアダマンタン誘導体誘導体を創製した。階層的生物評価系を用いて、脳機能改善の作用機序を明らかにする。
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